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101番目の舶ィ語
第十八話。終わる日常
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トを翻すと理亜とかなめの姿もフェンスの上に出現していた。

「か、完全にあの赤マントっ子の力を使いこなしてるわっ!」

「も、モンジさんっ、気をつけてください」

理亜は音央と鳴央ちゃんを一瞥してから。
静かに尋ねてきた。

「兄さん、答えてください」

「な、何をだ、理亜」

「兄さんが『101番目の百物語(ハンドレッドワン)』……そして、(エネイブル)』なんですね?」

心臓が早鐘を打った。答えたくない。返事を返したら決定的に……。
俺の大切な『生活』が、『日常』が終わる。
家に帰って、当たり前のように妹と過ごす、そんな『普通』の生活が終わってしまう。
前世では考えられなかった。普通の学校に行って、普通の高校生のようなひと時を過ごす。
ロア関連以外のこの『日常』は俺の癒しだった。
それなのに。

「答えてください、兄さん」

理亜は容赦なく、一切のためらいもなく、ただ冷徹な存在として、俺をフェンスの上から見下ろしていた。

「答えてください、兄さんは……兄さんは私の本当の兄さんではない……のですね?」

彼女の瞳には悲しみや喪失感。あるいは『絶望』といった感情が浮かんでいる。

「ああ、そうだ。俺は『101番目の百物語(ハンドレッドワン)』……そして、(エネイブル)』のロア。遠山金次だ!」

返事を返すと、理亜は深い溜息を吐いて……。

「……兄さんが平和な生活を送れるように、この世界に入ったというのに……」

「え、理亜もなのか?」

「はい。……ということは兄さんもなのですね。はぅ……」

「なあ、理亜……」

「一つだけ教えてください。今も貴方の中に兄さんはいるんですね?」

「ん? あ、ああ……」

「そうですか……なら」

理亜は目を伏せて頷き。
そして、その時。
空の雲が切れて。
理亜の姿を夜明けの光がスポットライトのように照らした。
その姿はまさに、女神のように神々しく。

「解りました。兄さん。
兄さんがもう戦わなくていいように、兄さんのロア。『101番目の百物語(ハンドレッドワン)』と(エネイブル)』を、この私『終わらない(エンドレス・)千夜一夜(シェラザード)』の一つにします」

「はい?」


理亜は厳かな光に包まれながら、圧倒的な威圧感と共に宣言する。
それは……俺が一之江やキリカ、音央や鳴央ちゃんに言った言葉そのまんまだった。













『私の物語になりなさい、兄さん』

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