14話
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初めて記憶が消えた。
誰か分からなかった。何年も前から一緒にいる太陽のことが。
何で?
決まってる。発作が起きたんだ。今まで何の兆候も見せなかった俺の中の病気が。
昨日の出来事の他に、何か記憶が消えているかもしれない。病室に戻ってきてからずっとその不安を拭いさることは出来なかった。
記憶が消える。昨日みたいに、消えていたことを覚えている上で思い出せれば、苦労はない。
でも、そんなこと何回も起こるわけがない。
じゃあどうすればいい?
俺は、俺は…………。
「……………よし」
ベッドから起き上がり、病室のドアを開ける。
「…聞き耳立てるなんて、ずいぶんなことしてくれるなぁ?太陽?」
「風間さん!?あの、これは、そのっ…」
「分かってるよ。…心配してくれたんだろ。大丈夫、もう平気だ」
「…………」
不安そうな顔を崩さない。
…全く、なら少し驚かせてやるか。
「なぁ、太陽。俺さ、サッカーしようと思う」
そう言うと、太陽の顔が固まった。
「そんで、外の世界を見に行く。昔みたいに脱走計画練らないとなぁ」
「ど、うしたんですか、急に」
「決めたんだよ。いつ記憶がなくなるかなんて分からないし、いつ悪化するかも分からない。なら、今この瞬間を自分の好きなように、自由に生きてみようと思ってな」
「風間さん…」
「だから、まぁ、あれだ。……俺にサッカー教えろよ」
なんだこれ、なんだか照れくさい。
思わずそっぽを向くと、がっと、肩をつかまれ、無理やり正面を向かされた。
「もちろんですよ!!俺と一緒に頑張りましょう!!」
輝くような笑顔。その顔を見て、少しだけ心臓がはねた。
…なんだ、これ…?
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