番外編
妄想シュウくん
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ロンボーンを構える。ちょうど私に横顔を向けている形になる。楽器を構えた途端、シュウくんは表情が変わる。いつもの柔らかい表情から、キッとした眼差しになり、まっすぐに前を見据え、そして……
――パァァァァアアン
暁ちゃんとビス子さんが出した音とは明らかに異なる質の音が、シュウ先生のトロンボーンから鳴り響いた。今のシュウくんの音は確かに前方はるか遠くに飛んでいく音という感じがし、それに比べると暁ちゃんとビス子さんの音は、確かに、横にだらしなく間延びした狙いが定まりきれてない音という感じがする。砲撃に例えると、シュウくんの音は狙いすました徹甲弾による敵艦船バイタルパートへの直撃。一方の暁ちゃんとビス子さんの音は、偏差射撃すら満足に出来てない散布界ゆるゆるの銀球でっぽうとでも言うべきか。
「う……」
「や……やるわね……さすが、ヒエイのマンだわ……」
私と同じことを暁ちゃんとビス子は思ったらしい。ちなみに“マン”というのは、ドイツ語でハズバンドの意味だそうだ(お姉ちゃんの金剛談デース!)
「わかったでしょ。とにかくまずは大きい音を出すこと。次にその音をまっすぐ飛ばすこと。大丈夫! 二人は一人前のレディーなんだから、すぐ出来るよ!」
「そ、そうね! なんせ私は一人前のレディーなんだから!!」:ぷー……
「わ、私も付き合うわアカツキ! 私だって一人前のレディーなのよ!!」:ぷー……
「もうちょっと! おなかに力入れて!」
「やぁー!」:プー!
「フォイヤー!」:プー!
二人の音が変わってきた。もう一息でシュウ先生の音にだいぶ近づくというのが、私にも分かるほどに。
「あともう一息!! 気合! 入れて!!」
「「〜〜ッ!!」」
――パァァァァアアン
暁ちゃんとビス子さんの楽器の朝顔から、とてもキレイな音が鳴り響いた。さっきのシュウ先生ほどじゃないけど、最初の音とは比べ物にならないくらいにキレイな音だ。
「やったー! 私にもシュウくんと同じ音が出せた!!」
「そうだね! これであかつきも一人前のレディーだ!!」
「そうよ! だって私は一人前のレディー!!」
無邪気に喜ぶ暁ちゃんの頭を、シュウくんがなでなでしていた。暁ちゃんは『こ、子供扱いしないでよ!』と怒っていたが、口調から察するに、そこまで悪い気はしてないのだろう。なんだかお父さんと娘みたいな感じだ。
一方、気のせいかビス子さんがそわそわしている。心持ちほっぺたが赤くなっており、シュウ先生の方をもじもじしながら見ている。まさかとは思うけど……
「し、シュウ? わ、私も出来たわよ?」
「ビス子さんも良く出来ました! 二人共やっぱりスゴいね。さすが艦娘だね!」
「あ、あの……もしシュウがやりたいなら……私のこと、なでな
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