番外編
妄想シュウくん
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物線を描いて酒保の店内に吹き飛んでいくのが見えた。酒保の奥から『ちょっと提督?! 何やってるんですか?!』という明石さんの悲鳴が聞こえた。
「あれ? なんだか外が騒がしいわね」
「そうね。でも暁は野次馬にはいかないわよ」
「そうねアカツキ。私もいかないわ」
「「なぜなら私たちは一人前のレディーなんだから!!」」
「そうだね。さすが二人とも一人前のレディーだね」
「えっへん! 一人前のレディーである暁をもっと褒めてもいいのよ?」
「そしてこのビスマルクももっと褒めていいのよ!」
目の前のシュウ音楽教室からビス子さんと暁ちゃん、そしてダンナ様の声が聞こえてきた。そういえば今日はビス子さんと暁ちゃんの練習の日だってシュウくん言ってたっけ。なんでも今日は外で大きな音を出す練習だとか。シュウくんとビス子さんはトロンボーン、暁ちゃんはトランペットをその手に持っていた。
それにしてもシュウくんは暁ちゃんビス子さんとずいぶん仲がいいように見える。なんだか虫の居所が悪くなってきた……なんてことを考えていたら……
「あ! 比叡さんだ!」
「え?! あ! ほんとだ! ねえちゃーん!!」
私に気付いて、満面の笑顔で手を振ったあと、こっちに走ってきてくれるシュウくん。シュウくんは私への気持ちを全面に顔に出してくれる人だ。彼を見ていると本当に気持ちがよく分かる。そして、その様子を見て思わず顔がニヨニヨしてしまうあたり、私もシュウくんのことが大好きで大好きで仕方がないらしい。
「姉ちゃん! おかえり!!」
「ただいまシュウくん!!」
離れ離れになっていた頃は、こんな生活が出来るだなんて思ってもみなかった。ほんの少し前までは思い出の中でしか見ることの出来なかったシュウくんと、いまではこうして気兼ねなく触れ合うことが出来る。シュウくんの感触をこうして実際に確かめることが出来るだなんて、思ってもみなかった。
「お姉ちゃんは今日一日のお仕事は全部終わったから一緒に晩御飯食べに行こうと思ってこっち来たんだけど……シュウくんはまだ終わらなさそうだね」
「そうだけど……でも今日はこれから外で二人におっきな音出してそれで終わりだからね。よかったら姉ちゃんも一緒に来てくれる?」
行きたい!! ……でもシュウくんのお仕事の邪魔をするわけには……
「んー……じゃあ一応二人に聞いてみよっか」
シュウくんはそう言いながら後ろの二人を振り返り、大声で叫んだ。
「ねー! あかつきー!! ビス子さーん!! 姉ちゃんも一緒に行っていいかな?!」
「いいわよ! だって私は一人前のレディーなんだもの!!」
「それよりもシュウ! 私をビス子と呼ぶのはやめなさい!!」
「ありがとー! じゃあ姉ちゃんも連れて行くねー!!」
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