番外編
妄想シュウくん
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……つまりシュウくんやお姉様達が私を助けに来てくれた日、私はシュウくんの命を助けるため、やむなくシュウくんのはじめてを奪ってしまった。
シュウくんは水中で私に指輪をくれた後、意識を失った。危機を脱した後に私がシュウくんの元に駆けつけた時には、シュウくんはすでに呼吸も止まり、顔が青ざめ、脈もすでに止まっていた。
『シュウくんは……お姉ちゃんを捕まえてくれた……お姉ちゃんとケッコンしてくれた!! だから今度は! ……お姉ちゃんが……シュウくんを捕まえるから!!』
私は必死にシュウくんに心臓マッサージを行い、何度もシュウくんに人工呼吸を行った。ほどなくしてシュウくんは口から大量の海水を吐き出し、何度も何度もむせて、自分の肺から水を絞り出していた。
『よかった! 気がついたんだねシュウくん!! よかった!!』
私はシュウくんの身体を抱きしめ、弟と会え、こうして触れ合えた喜びを胸いっぱいに感じていた。私だけではない。金剛お姉様や加賀さんといった艦隊のみんなが、私とシュウくんを温かい眼差しと笑顔で見守ってくれた。
肺に入っていた海水をすべて吐き出したシュウくんはしばらく呼吸を整えたあと、スクッと立ち上がった。私ももちろん立ち上がり、しっかりと甲板を踏みしめて立っている弟を抱きしめてあげた。ずっとこうしてあげたかった。
『シュウくん……助けてくれてありがとう……お姉ちゃんとケッコンしてくれてありがとう……!!』
シュウくんは無言で私の腰辺りに左手を回した。そして右手で私の頬を伝う涙を優しく拭ってくれた。
『姉ちゃん』
シュウくんが、私をまっすぐ見据え、私のことを呼んだ。私は、この優しい呼び声をずっと聞きたかった。無線を通してではなく、直接聞きたかった。
私は自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。耳まで自分の体温以上の熱さになっていることがよく分かる。シュウくんの顔を見る。海水で濡れているためか……それとも久々に会ったせいか……ものすごく端正な顔立ちに見える。いけない。なんだか妙に恥ずかしい……
さっきまで人工呼吸をしていたためか、不意にシュウくんの唇が目に留まった。さっきはまったく気にしなかったのだが、男の人とは思えないほどに綺麗な唇をしている。恥ずかしくなって目線を動かすと、シュウくんのブラウンの瞳と目が合った。シュウくんの瞳は榛名の瞳の色と少し似ていて、それでいてキッとまっすぐにこっちを見つめる、意思の強い眼差しをしている。
私の頬に触れているシュウくんの右手が、私の顔を引き寄せはじめた。私も自然とシュウくんに寄り添ってしまう。
『ひ……ひぇぇぇぇ……』
口から飛び出てしまうんじゃないかと思うほどに、私の心臓がドキドキしている。ま、まさか……この比叡のはじめ
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