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SAO−銀ノ月−
第九十四話
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LOに来たというファン――ルクスの姿が消えていた。今の今までそこにいたはずであり、周囲を見渡してみると。

「……何故見てるんです」

 店の柱からチラチラとキリトを伺うルクスという姿に、気が動転して妙な言葉が勝手に口から零れ出た。何より驚きだったのは、誰にも気づかれぬうちにルクスの背後に回っていたリズの姿だったが。

「ほら何逃げてんのよルクス! あんたの憧れの人だってば!」

「やめてくれリズ! まだこっ、心のっ、準備がいるっ!」

 憧れの人に会うのが恥ずかしいのか、引っ張ろうとするリズに対し、力の限りルクスは柱を掴んでまで抵抗する。そんな光景は店内の喧騒によって、俺にリーファ、ついでにリーファを見ていたレコンにしか知られなかったのは、不幸中の幸いか。

「よし、それじゃあアインクラッド――行こう!」

 ユウキのリーダーらしいかけ声に、メンバー――スリーピング・ナイツの面々だけでなく、俺たちまで気合いを合わせて声をあげる。……あのデスゲームの時には、まさかこんな会話をすることになるとは、夢にも思っていなかった。GGO、死銃にリーベ。彼女らと戦った非日常から、仲間がいるALOという日常へ……戻っていくような気がした。

 ……後日。水着コンテストで優勝者として表彰された、ルクスとユウキのスクリーンショットを見て、小さく狂喜を浮かばせている者の存在を――その時の俺に、知る由はなく。


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