九十七 里抜け
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「―――貴女が俺の後ろ盾になる、というのか」
「悪い話では無いだろう?」
我愛羅の質疑に、綱手は鷹揚にも片眉をついと上げてみせる。
最近就いたばかりだというのに火影の風格を既にその身に纏う彼女を、我愛羅は眩しそうに見遣った。
静まり返った室内。重苦しい空気が満ちる火影室に反し、外では穏やかな光景が広がっている。
現状を知らぬ里人達が平和を謳歌している様を窓からちらりと覗き見てから、我愛羅は思案げに顔を曇らせた。
確かに化け物として畏怖されてきた自分が何の後ろ盾もなく風影の座に就くのは難しい。
よって綱手からの申し出は我愛羅にとっては願っても無い事だ。
だが代償無しの協力など綺麗事に過ぎない。
「……見返りは何だ?」
我愛羅の察しの良さに、綱手は口許に弧を描いた。
それは折しも、サスケを追い、波風ナル達が里を出て、後ほどの話であった。
波風ナルを背に庇ったまま微動だにせぬ我愛羅を、サスケは怪訝な眼差しで見据えた。
まるで大切なモノを守るかのようにナルを背に隠す様子を見れば、彼が現在どちらの味方なのかは一目瞭然である。
「どういうつもりだ…?」
「今度は木ノ葉についたか…。あちこち忙しいヤツだなァ」
サスケの質問に被せるようにザクが呆れた声を漏らす。周囲の怪訝な視線に、我愛羅本人は無表情を返した。
「俺とて、好き好んで木ノ葉を襲撃したわけじゃない……命令だった」
そこで初めて、我愛羅はサスケを見据えた。我愛羅と眼を合わせたサスケが秘かに息を呑む。
『木ノ葉崩し』で垣間見た化け物の眼ではない。凛とした人間の眼がサスケの顔をじっと覗き込んでいた。
「今、此処にいるのと同じように…な」
どこか含みのある物言いに、サスケではなくザクが反応した。状況からして、木ノ葉側についているらしい我愛羅に追及する。
「木ノ葉からの要請でそいつと同じく、連れ戻しに来たってわけか?」
「……………」
ナルを指差しながら、サスケを木ノ葉に連れ戻しに来たのかと言うザクの質問に、我愛羅は答えなかった。代わりに、背後からひょこっと顔を出したナルが「そうなのか?」と訊ねる。
ザクの言葉通り自分と同じ目的でサスケを追って来たのなら、これほど頼もしい味方はいない。
そう期待を込めて覗き込んでくるナルのキラキラした瞳から我愛羅は顔を逸らした。言いにくそうに口ごもる。
「………そうだ…」
我愛羅の答えを聞いた途端、ぱあっとナルは顔を輝かせた。
「よっしゃ!!何が何だかわかんねーけど、一緒にサスケを連れ戻そーぜ!」
「させるかよ!!」
意気揚々と宣言したナルと我愛羅のタッグを邪魔しようと、ザクが攻撃を仕掛ける。二人の仲を引き裂くかの如く
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