確率の惑うは誰が為
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わからない発言で私達の思考を縛りに来た何者かとしか思えない。
でも彼女の言葉の続きを、私は聞くしかなくなった。
「へぇ……続けてみなさい」
冷たい声で言う華琳様は、時間の無駄だと言わんばかり。気にするなと目で伝えてくれる。
そんな優しさを受けても、私はどうしても、胸に湧いた嫌な感覚が拭えないでいた。
「……大局に抗いし者の末路は身の破滅。確率事象は収束する。
黒き麒麟を失いたくないのならば、決して大局には抗わせるな。その役目を担えるは鳳凰のみ。
努々忘れることなかれ、歪められし世界は黒き麒麟の……異端の存在を決して許さぬ」
そんな事、分かっている。
華琳様に抗ったその時は、狂ってしまっているその時は、私達が全力で止めるのだから。
ずっと準備を進めている。優しい人達ばかりだから……皆、彼を大切だと思っているから、抗わせたりなんかしない。
何より、世界なんかに許して貰わなくても……あの人は自分で世界を変えていく。許しなんて必要ない。思うが儘に世界を変える黒麒麟は、私達と一緒に平穏を手に入れるんだから。
世界の全てが敵になろうとも、彼は抗うことを止めない。そんなこと……私が一番知っている。
この人は敵だ。
予言なんて、天が決める道筋と同じ。
そんなモノに従って幸せになっても、なんら価値なんてない。
私達の生きる道は、私達だけのモノだ。運命は自分で切り開くモノだ。
天などに従うわけにはいかない。其処に幸せがあるとしても、私達はそんな下らないモノに縋りついて幸せになんてなりたくない。
「……帰って、ください」
「雛里……?」
「雛里ちゃん?」
小さく零した拒絶。華琳様と月ちゃんが心配してくれてる。
分からない。きっと分からない。
二人はあの人の真実に気付いていないのだから。
気付かせるわけにはいかない。あの人は、私が守る。あの人の帰る場所は、私が守る。
睨みつけた。顔が見えないのがもどかしい。
どんな顔をしているのか。私達の人生を弄ぼうとするこの人は。
天に遣わされてきたというのなら、私の敵だ。
天に従わせようとしているのなら、私達の敵だ。
抗われたくない世界の意思だというのなら……愛しいあの人の敵だ。
拒絶し、否定し、排除しよう。
私達には、天の手助けなど必要ない。
「帰ってっ」
「……」
強く言うと、首を振って管輅さんは路地の闇に向かった。ぴたりと脚を止めて振り向くことなく、空を仰いで紡いだのはこんな言葉だった。
「……虚数は世界に認められない。主人公の居ない物語に救いは無い。人々が望むのは“天の御使い”ただ一人。正史の想念には、外史の想念は抗えぬ。
しかし正史が捻じ曲げたのもまた事
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