確率の惑うは誰が為
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ゃないのが許せない」
拗ねたような口ぶりで、華琳様は突拍子もないことを言った。
そういえばと思い出したのは、彼女が同性を好きな人だったこと。忌避もなく大胆な発言をする彼女にこっちが恥ずかしくなってしまう。
でも、月ちゃんは全く動じずに微笑んでいた。
「華琳姉さまも一番ですよ?」
「誰もが一番で優劣なんてない、とか言うつもり?」
「いいえ、私の一番の姉さまという意味で」
「他にも姉が居るとでも?」
「順番によっては……そうなるかもしれませんね」
「順番……? ああ、そういうこと」
そうなるかもしれない、の意味が分からずに首を傾げた。華琳様は直ぐに気付いたようで、何故か私の方をチラと見て直ぐに視線を月ちゃんに戻す。そのまま……凄みのある笑みを浮かべた。
「月? あなた……ろくでもないこと考えてるみたいね」
「そうでもしないと欲しいモノは手に入りません」
「否定はしない。けれど私はこう返す……その程度で満足?」
「いいえ、“その程度”じゃありません。“それくらい大きなモノ”が欲しいんです。だって私が欲しいのは華琳姉さまとは違うモノなので」
「へぇ、言うじゃない」
どんどんと話が進んで行く。話の流れの途中で華琳様の空気が柔らかくなった。どうしてかは分からない。
「そ、その、何のお話をなさっているんでしょうか?」
教えて欲しくて聞いてみた。月ちゃんの欲しいモノも、華琳様の欲しいモノも聞いてみたい。
「悪いわね雛里、月が欲しいモノの事だけれど……何が欲しいのかはいつか月に聞きなさい。今は言えないでしょうしね」
「そうなの? 月ちゃん」
「うん、ごめんね。いつか絶対話すから」
いつか話してくれるのなら。きっと大切な話なんだろう。出来れば協力したい。一緒に彼を支えてくれる友達に、私も何か返したい。
(繋ぎ止める鎖は強くて多い方がいい……例え矜持を無視しても、か)
「え……?」
「なんでもないわ、さあ、気を取り直して本屋にでも行くわよ。もうあいつの話を止めないわ、あなた達二人には無駄みたいだしね」
ぽつりと何か華琳様が言ったけどよく聞き取れず、ふっと笑った後に歩き初めてしまった。
急ぎで着いて行く。歩きはじめる前に私に向けた華琳様の視線が暖かかったから、きっと悪いモノでは無いはず。
「雛里ちゃん、行こう?」
「うんっ」
銀月のような彼女の微笑みも、何処か華琳様と同じようなモノで。
深く聞かなくてもいい。月ちゃんが話してくれるその時に、私も一つの願いを話してみよう。
――いつか戻ってくる“あの人”を、皆で幸せにしてあげたいから。
わがままかもしれない。わがままなのだろう。
きっとあの人はそれを望まない。でも私は望んでみたい
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