確率の惑うは誰が為
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いき」
「ひゃぅっ」
唇を尖らせた華琳様は、むにっと月ちゃんの頬を摘まむ。往来でのそんなやり取りに、道行く人達は苦笑を零しながらすれ違っていく。
「いい? 今日は私との“でぇと”なの。だからあなた達二人はあいつの話をするの禁止」
「ひぇも――」
「き、ん、しっ」
鼻先が触れ合うくらいの距離で言われて、月ちゃんはコクコくと首を振る。ジトリと私にも視線が向いた。こんな華琳様を見るのは初めてだけど……なんか可愛い、と思ってしまった。
「……雛里もこうされたいかしら?」
「い、いえ、わかりましゅた、あわわ……」
鋭く私の視線に気付いた華琳様はに睨まれる。噛んじゃった。恥ずかしい。
やっと月ちゃんの頬から指を離して、落とされたのは盛大にため息を吐いた。
「さ、行くわよ」
少し涙目になっている月ちゃんと、若干ちくちくする空気を纏った華琳様に並んで歩く。
彼の話をするなとは言ったけれど……それなら仕事の話は出来ない。それほど深く入りこんでしまってる。
何を話そう、と思っても直ぐには思いつかなかった。
土台を作り上げたのは華琳様達で、私達はそれに乗っかっただけ。でもやっぱり彼の思い描いている世界は私達のようなモノにとっては魅力的過ぎて、どうしても思考の外には追い出せない。
街を見ても、人を見ても、此処に来た時よりも良くなった。
足りなかったわけじゃない。上乗せされてしまったから、元々在ったより良い世界が霞んでしまったということ。
ううん、言い換えよう。
――華琳様達が作るはずだった街が、華琳様達と彼と私達で作る街になったということ。
自分達のおかげ、なんて浅ましいことは思わない。ただ単純に、彼と私達で僅かに世界を変えられたことが、やっぱり嬉しい。
実感出来る世の中の改変に立ち会えているこの瞬間に胸が弾む。
「雛里、またあいつのこと考えてるでしょう?」
「あわっ」
「分かり易過ぎ。あいつのことで思いに耽ってますって顔に出てるわ」
「そ、そんなに分かり易いですかっ?」
「ええ、春蘭や桂花くらいにね」
「あぅ……」
どうしてだろう。そんなに顔に出てるなんて。
稟ちゃんみたいに表情に出ないようにしたいのに、戦の時以外ではこんなにもダメダメだ。
呆れたようにまたため息を吐いた華琳様の隣で、月ちゃんは手を口に当てて上品に微笑んだ。
「雛里ちゃんは秋斗さんのこと大好きだもんね」
「ゆ、月ちゃんっ」
顔が熱くなっていく。誰かに自分の気持ちを言われるとこんなにも恥ずかしいのか。
「はぁ……もういいわ。またあいつの話になってるじゃない」
「華琳姉さまもそんな頑なにならなくても」
「いやよ。こんなに可愛い雛里と月にとって、私が一番じ
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