確率の惑うは誰が為
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だ。
箱庭のようだと彼は言った。壁に守られているのは安心に繋がるかもしれないけれど、管理されている意識は抜けないだろうとも。
難しい……本当に難しいことを彼は考えている。華琳様もそれを読み取っているからか、彼の思考の全てを引き出そうとはしない。
あまりにかけ離れすぎている価値観は猛毒にもなる。彼の思い描いている平穏は、やはり作るのが容易ではない。
――でも、出来ないわけじゃない。
それでも作ってみたいと思わせられて今がある。
許昌を中心とした都市計画化は、十年や二十年……いや、それ以上先を見て行っている大きな事業。
自分の人生だけでは見れないかもしれない。見れないと思う。でも……少しだけ、新芽だけでも見る事が叶うのなら、どれだけ素晴らしいことだろうか。
「……? 雛里?」
「ひゃ、ひゃいっ」
以降に潜ったままだったから、突然声を掛けられて飛び上がってしまった。月ちゃんも華琳様もクスクスと可笑しそうに笑っている。恥ずかしい。
「考えごと?」
「は、はい……彼が思い描く未来に、想いを馳せていました」
「……」
言うと、華琳様の雰囲気が僅かに険しくなった。笑顔は変わってないけど……少し怖い。
「そう、あいつのこと考えてたの」
「い、いえ……都市計画のことを」
「……誤算だったわ」
何を、と華琳様は言わない。
分からずに首を捻っていると、月ちゃんはまた小さく笑った。
「お仕事のお話をしてしまうとどうしても彼が絡んで来てしまいますよ? 華琳姉さま」
「そうね。少しばかり深く入り込ませ過ぎたかもしれない」
「取り込むことを決めた時点でそれは諦めるしかないと思います」
「……癪だけど、有用なのは認めるわ」
「でもやっぱり、華琳姉さまが人を集め、才を重んじていなければ此処までは出来ません」
「下手な慰めは止めなさい、月」
「ふふ……はい、申し訳ありません」
やりとりを聞いていて分かった。華琳様は……少し拗ねていたんだ。
自分と居る時くらいは、という子供のような……言ったら怒られそうだけど。
でも、怒っているのに怒っていない。そんな華琳様を見るのは初めてのこと。
まだ教えてくれない名前が決まってから、やっぱり月ちゃんは変わったと思う。
動じずに意見し、高きから物事を見て、華琳様の心も読みとる……まるで本当の姉妹みたい。
「前まではもう少し可愛げがあったのに……やっぱりあいつのせいかしら」
「はい。あの人のおかげです」
微笑んだ月ちゃんは何処か誇らしげだった。ちょっとだけ、ジクリと胸が痛んだ。
私も隣に並んで来た。でも、月ちゃんみたいにはなれない。それでいいことは分かってる。私だって、と思ってしまうだけだ。
「……なま
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