確率の惑うは誰が為
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やはりというべきか、街の活気は以前に比べて増している。
強力な王が治める土地というのは安定しているのは言うまでも無い。人々が安心して暮らしていける証拠だ。
貧困に喘ぐ難民にも耕す土地を与え、賊徒が出ると聞けば即座に対処に回る。街から外れた所にある村であっても救済の手は届き、人が増えることで問題も増えるが、それを上回る有益が齎されている。
急速な発展はあまりよろしくないが、所属時から華琳様が苦心し、桂花さんが整えていた政治機構の体制の恩恵によって、今はまだ大きな問題は出ていない。
何よりも安全が第一。命が保障されるというだけで人は希望を持てる。民にとってはそれこそが求めているモノなのだ。
許昌は今や洛陽と比べても劣らない程になっていた。
今日はそんな街中にて、三人でお買いものをする為に歩いている。
普通は春蘭さんや秋蘭さんがついて来る。けど今日だけはと、華琳様は私達だけを連れて歩いていた。
「視察も兼ねて久しぶりに街に出てきたけれど……目に見えて効果が分かるというのは嬉しいものね」
髑髏の髪留めが小さく揺れた。嬉しそうに弾んだ声は柔らかく、机に向かって詰めてきたモノを確認出来て満足気。
綺麗に舗装された町並みも、通りを走る子供達や人々の笑顔も、全て自分達で作り上げてきた平穏の結果。彼と歩く時とは違った感覚で物事が見れて嬉しく思う。
「城下町の舗装は八割方終わってます。後は北区の裏路地の整備さえすれば“都市計画”の第一段階は完成ですね」
「ええ、許昌はこのまま進めていいわ。あいつが言ってた“市街化区域内”というのは問題ない。じゃあ、“非線引きの区域”はどうなってる?」
「村々を繋ぐ交通路の再整備や新装も滞り有りません。許昌と他の都市を繋ぐ“道の駅”の役割を持たせたことで商人達も足繁く通ってくれていますから」
「そう……端まで手が届いているのなら結構。この調子で行きましょう」
不思議な言葉を幾つか彼に教えて貰った。
私達の街を市街化区域、城壁の外を非線引きの区域と彼はそう呼ぶ。区域内では建築する家屋に条件を設け、街並みの景観にも気を配り、住めたらいいという家から趣味を盛り込んだ屋敷まで幅広く建物を扱うことにしたのだ。
細かい案だが、許昌という街を他には無いたった一つの存在に仕立て上げることには華琳様も賛成しており、これから五年か十年の後にはもっともっと人の集まる街となるだろう。
ちなみに非線引きの区域と呼ぶ村々は、後々に都市を支える重要な場所になるとのことで、それについても皆で頭を悩ませている所。
彼の異質な思考は受け入れがたい……が、私達にとっては新鮮で面白い。
単純に城壁を立てて街を作ることを考えている私達とは違い、彼は城壁に捉われずに“街”を作ろうとしているの
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