第21話 友との再会
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殿、それは本気で言ってるのですか?」
「はあ?何言ってんだあ?本気に決まってるじゃねえか」
そう答えるバサラに誠和は
(ああ、聞き間違いでいてほしかった・・・)
そう思うしかなかった。
誠和はバサラと1月とはいえ共に旅をした仲だ。
バサラの歌に対しての想いや情熱は分かっているつもりだ。
だが、今回の五胡に歌を聴かせる、これは理解できない。
五胡と言えばこの漢帝国を脅かす異民族の呼称であるが、彼らの残虐性や強さを聞いただけとはいえ恐ろしいものと理解している誠和、いや漢民族にとってはバサラの言っていることが理解できない。
いや、理解できるはずが無い。
しかし、そのように考えている誠和だからこそバサラのことを止めなくては、そう考えていく。
「バサラ殿、五胡といえば、彼らはその残虐性と強さでこの漢帝国をも脅かすものでございます。そして彼らと我が漢民族とで理解し合うことなど不可能です。そのような輩にいくらバサラ殿の歌とはいえそれだけで理解し合うなど、不可能です。だからどうかお考え直しください。」
「なんでできねえって決めつけるんだ。もしかしたら、分かり合えるかもしれねえじゃねえか!」
「ですが、これは400年、いやそれ以前から続いている争いなのです。それを歌で分かり合うなどと、できるはずがありません。」
「そんなもんやってみなきゃ分かんねえだろ!やってみりゃあ、分かり合えるかもしれねえじゃねえか!」
誠和はバサラを止めることはできないと悟る。
「・・・失礼いたしました。私はバサラ殿を否定したいのではなく、あなたを止めるために申し上げました。ですが、あなたを止めることはできない、同時にあなたならできるのではないか、そう思いました。バサラ殿、どうかお気をつけてくだされ。」
そう、言葉をかける。
「ああ、やってやるぜ!」
笑顔でそう答えるバサラ。
(ああ、思えばこの方は出会った時からまるで変わらない。どんなものであろうと自分の歌を聴かせる。それだけの想いで400年以上も争いを続けてきた五胡に歌を聴かせ分かり合うなどと、この長い中華の歴史でまだ成し遂げていないことをこの方は本気でやろうとしている)
誠和はそう思いながらも自然と体が震えながらも顔には興奮が隠せないようだった。
これがバサラ以外の人間が言っても笑いながら侮蔑の目を向けていただろう。
だが、バサラと旅をしたことのある誠和は旅の中でバサラの歌にかける想いや情熱、そして歌の良さを知っている。
さらには外には并州を暴れまわっていたあの馬中の赤兎もいることから、あの赤兎とすら心を通わせたということだろう。
なら、できるかもしれない。
五胡との争いに終止符を打つことなどはできないかもしれないが、心を通わせることはできるかもしれない。
そう思ったからこその興奮だ。
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