10. 大海原でつかまえて
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一方水上では、金剛さんの執拗な砲撃を嫌がって艦隊から少し距離を置いたヲ級たちに対して、球磨が接近戦を挑み始めたのが見えた。
「……クマッ!!」
球磨の魂の叫びと平手の音がここまで聞こえる。球磨がヲ級を張り倒す度『バチーン!!!』という痛々しい音がここまで聞こえ、その度に、ヲ級が頭にかぶった大きな帽子のようなものが外れそうな勢いでヲ級がぐらついていた。
姉ちゃんのすぐそばにいる空母棲鬼が、空高く舞い上がる僕とカ号に気付いたようだ。空母棲鬼から無数の艦載機が発射されたが、僕とカ号の周りに加賀さんの艦載機が集まり、空母棲鬼の艦載機を叩き落としていく。
「加賀さん! ありがとう!!」
『あなたたちを守るのが私の仕事。気にせず進みなさい』
無線から加賀さんの声が聞こえた。冷静な加賀さんの声が心強い。
『何……やるの? シュウくん……何する気なの……?』
同じく無線機から、姉ちゃんの声が聞こえる。僕の姿が見えたようだ。こっちを不安そうな眼差しで見ているのが、上空からもよく見える。説明をしたいが、僕は今、無線の送信機を持っていない。
『比叡?! 聞こえマスカ?!』
『お姉様……シュウくんは何をするつもりなんですか……?』
『これから王子様が迎えに行くデース! ムードもへったくれもないのは我慢するネー!!』
僕に変わり金剛さんが説明してくれたのはいいが、それじゃ全然説明になってない。
『いいから比叡は黙ってシュウくんを待つのデス!!』
『は、はい。了解ですお姉様』
なんとか姉ちゃんは納得してくれたようだ。僕とカ号はぐんぐん高度を上げ、水面にいる金剛さんたち艦娘と深海棲艦たちの姿は豆粒ぐらいの大きさになったところで、姉ちゃんの頭上の位置まで移動する。よし。ここまでは作戦通り。あとはゴーヤのポイント到着を待つばかり。
『ポイントに着いたでち!!』
ゴーヤの通信が入った。
「妖精さん! お願いします!!」
僕が自分の背後で僕を釣り上げているカ号を振り返り、妖精さんにそう伝える。カ号が除々に高度を下げていく。足元に広がる豆粒大の大きさのみんなが徐々に大きくなってきた。
ぼくたちの存在に気付いた空母棲鬼が再び僕らに向けて艦載機を飛ばすが、瞬時に加賀さんの艦載機が僕らを取り巻き、空母棲鬼の艦載機を撃墜する。
「やらせません。誰にも手出しはさせないと言ったはずです」
加賀さんの方を見た。加賀さんはこっちをまっすぐに見据え、矢をつがえているのが分かった。加賀さんの声が、無線ではなく直接聞こえた。
「行きなさいシュウ。比叡さんをお願いします」
「分かりました加賀さん、ありがとう」
ヲ級たちも僕らを見上げこちらに艦載機を飛ばそうとするが
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