第二十五話
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イナに向かって突進する。猪人に恥じない猪突猛進っぷりはミノタウロスなど比にもならぬ迫力がある。オッタルの突進を見てすかさず岩から飛び降りたレイナだが、その程度、オッタルは容易く見破っていた。飛び降りる軌道上に跳躍し、凶悪な一撃が身動きの不自由なレイナを襲う。
ところがレイナは空中で先んじて身を捻ることにより拳を紙一重で回避し、オッタルの逞しい腕に一瞬両腕を這わせたかと思うと、彼と空中ですれ違うように地面に降り立った。
着地の余波だけでレイナが乗っていた岩盤を容易く粉砕したオッタルは砂埃が視界を覆う中、ふと右肩に違和感を覚えた。
(……腕の関節を壊されたか)
右腕の第二間接と手首があらぬ方向に捻じ曲がっていた。おそらく先ほどの交錯でやられたのだろうが、まるで壊されたことに気づかなかった。それほどまでにレイナの業が速かったのだ。今更になって鋭い痛みがオッタルを襲うが、そんなものに構っている暇は無かった。
「そろそろ反撃させてもらうよ」
突如左肩付近から少女の声がし、本能に従うままに左肘を声のした場所に突きながら振り返る。しかし、肘から伝わってきた感触は気味の悪いもので、まるで水を殴ったかのような違和感だった。
それを感知したときにはもう遅く、オッタルの身体の一箇所にひんやりとし僅かな柔らかみを持ったものが接していた。
即ち、振り返った横顔のこめかみ。
横目で見たのは左腕を無残に引きちぎられながらも、澄みきった湖のような光を宿す瞳。勝ち誇るでもなく、嘲るでもなく、ただ見据えているだけの瞳だった。
(全て読み通りだったとでも言うのか……ッ!?)
直後、【猛者】の意識は途切れた。
◆
舞い上がった砂塵と共に豪傑の巨体が音を立てて崩れ落ちた。腕や脚は不気味にうごめいており、指や足首などは目的も無くせわしなく動いている。今のオッタルは重度の平行機能障害に陥ってるはずであり、意識があれば脳みそを直接かき乱されているような想像を絶する感覚に襲われるはずだ。。耳にある大切な神経に多大な負荷が掛かっている状態のため一般人なら十中八九後生に障害が残るが、並み以上に身体のあらゆるところが強化されているオッタルなら少し放っておいても平気だ。
平衡感覚を司るこめかみに貰った衝撃をぶち込んだからね。いくら力加減されていようが急所に当たればオッタルと言えどただ事じゃ済まない。後で【ヒリング・パルス】で治してあげるから、私の服とバックパック諸々が見つかるまで待っててね。
それにしても自分でも気味が悪くなるくらい腕もがれちゃったな。神経は許容過多の情報を一度に受け取ると防衛反応のため麻痺するから、おかげでほとんど痛みは感じなかったけど、さすがに二十回以上も千切られると人としてどうか
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