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想い出
2部分:第二章
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えるようになっていた。お母さんの今までの言葉で。
「頑張るわ。有り難う」
「わかってくれたのね。よかったわ」
「それでね。お母さん」
「今度は何かしら」
 話が変わったのがわかった。お母さんはその優しい笑みのまま娘に応えた。
「私も。早く旦那様が欲しいわ」
 女の子がよく夢見る。お嫁さんの話になっていた。
「早く。お母さんみたいに」
「今は駄目よ」
「駄目って?」
「焦ることはないのよ」
 やはり優しい顔で佐代子に告げるのだった。
「佐代ちゃんを待っていてくれているから」
「そうなの」
「ええ。だから焦っては駄目よ。かって駄目になるから」
「そうなの。それじゃあ」
 お母さんの言葉に頷いて。納得する佐代子だった。
「そうするわ」
「絶対ね。お母さんとの約束よ」
「うん」
「指切りげんまん」
 お母さんはそっと右手を出してきた。小指を立てて。
 佐代子もそれに応える。そうして二人で指切りをするのだった。
「これでいいのね」
「ええ、これでいいわ」
 にこりと笑って終わった。これで約束ができた。
「じゃあお母さん」
 佐代子は約束が終わってからお母さんにまた言う。
「何かしら」
「これからも色々あって心配なことも一杯あるけれど」
「ええ」
「私それでもやっていくわ」
 明るい顔になっていた。その心配を一つ乗り越えた顔であった。
「そうでいいのよね」
「ええ、そうよ。お母さんも皆もいるから」
「うん、頑張るわ」
 にこりと笑ってお母さんに言う佐代子であった。そうして中学校に入ってすぐに。新しくできたお友達を家に連れて来た佐代子を見て目を細めさせるお母さんがいた。


想い出   完


                 2007・10・20

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