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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五話 リメス男爵
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エーリッヒ。頼みがあるんだがな」
「何?」
「うん。リメス男爵が君に会いたいと言っているんだよ。どうだろう?会ってもらえないだろうか?」
「リメス男爵が……。いいよ、会っても」


「エーリッヒ・ヴァレンシュタインです」
「よくきてくれた、エーリッヒ。カール・フォン・リメスだ。こんな姿ですまんな。もっとこちらへ来てくれ」
俺を迎えたのはベッドに横たわった老人だった。疲れた顔をしているが目は澄んでいた。
「君にはすまんことをした。まさか連中があそこまでするとは。典礼省への手続きさえ済んでしまえば連中も諦めるだろうと思ったのだが。本当に君にはすまんことをした。許してくれ」
リメス男爵は頭を下げて謝った。

「男爵閣下は大丈夫なのですか?」
「わしが死んだら、典礼省より検死官がくる。死体に異常があれば当然調査が入る。真っ先に疑われるのは連中じゃ。そのことは連中もわかっている。腹は立っても何も出来ん。むしろ何かしてくれれば良かった。わしはもう老い先短いからの。そうすればコンラートもヘレーネもあんな事にはならんかった。すまんことをした」
「閣下、使用人たちは信じられるのですか」

ハインツが問うと、男爵は天井を見ながら
「もうだれもこの家の使用人に興味を持つ人間はおらんよ。自分のもので無くなると思えば関心も無くなる」
そう言って、今度は俺の顔をじっと見つめた。
「君は本当にヘレーネに似ているな。そっくりだ。よく自慢の息子だと言っておった」
「母と親しかったのですか。仕事以外でも」
「親しかったよ。親子じゃからな」
「親子?」
俺は間の抜けた声をだして男爵を見た。そしてハインツを。ハインツの顔にも驚きがある。
「嘘ではないよ。これを御覧」

老人は古びた写真を出した。写真には一組の男女が写っている。男性は40〜50歳代、女性は20〜30歳代か。親子かと思ったが女性の腕には赤ん坊が抱かれている。
そして男性は多分リメス男爵だろう。約30年から40年前の写真だ。そして赤ん坊を抱いた女性は母とよく似ている。祖母か?。祖母のフレイアは俺が生まれる前に死んでいたはずだが……。俺はまたハインツと顔を見合わせた。どういうことだ?。リメス男爵は俺の祖父なのか。

「私とフレイアは40年前に出会った。そして愛し合い生まれたのがヘレーネだった」
「何故ヘレーネを男爵家の娘として迎えなかったのです」
「フレイアがそれを望まなかったからだ。彼女には父親が残した財産があり、ヘレーネを育てるのに苦労はしなかった。それに彼女は貴族が嫌いだった」
「貴族が嫌い? ですが閣下も貴族ですが?」

「ハインツ、出会ったときは貴族だとは思わなかったのだよ。まあ、わしも身分を隠したし。当時わしは妻を無くし独り身だった。彼女と結婚しよう思ったが、
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