第一章
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フラメンコドレス
スペインのセビーリャは有名な街だ、カルメンやフィガロの結婚等歌劇の舞台になることも多い。情熱の国と呼ばれているこの国の中でもとりわけ有名な街の一つだ。
その街は今だ、結構な騒ぎとなっていた。
服屋は特にだった、商店街の服屋であるカルメンでは親父のアントニオ=サラグサが口髭を捻りながら妻のイザベラに言っていた。
「最近変わったな」
「変わったって何が?」
「ドレスがだよ」
それが変わったというのだ。
「本当にな」
「フラメンコドレスね」
「もう少ししたら春祭りだろ」
少し浅黒い肌ではっきりした黒い目に大きな紅の唇を持つそろそろ熟してきた感じで長い縮れ気味の黒髪の妻に言った。
「だから最近店にも仕入れてきてるが」
「確かに変わったわね」
妻も夫のその自分より白い顔を見て言う、口髭の目立つ顔でもう四十三歳だがまだ太ってもおらず髪の毛も薄くなっていない。店の黒と白の服も似合っている。
「あなたは別に、だけれどね」
「これでも体重は増えてきたぞ」
「それでも私よりましでしょ」
「そう言う御前こそ昔と一緒だよ」
「あら、美人だとでもいうの?」
「今もな、まあ俺達は変わってないだろ」
自分達はというのだ。
「別にな、けれどな」
「ドレスは、なのね」
「昔はあれだっただろ」
店にこれでもかと並べているスペインの花々の様に色とりどりの華やかなそのフラメンコドレスを見つつの言葉だ。
「カルメンみたいなのだけでな」
「他はなのね」
「別になかっただろ」
「それはね」
妻も夫のその言葉に頷いた、店の商品達をチェックしつつ。
「確かに私達の若い頃はね」
「ああ、ドレスもこんなに色々なくて」
「シンプルだったわね」
「最近急にだな」
「色々増えてきたわね」
「またどうしてだ」
首を傾げさせて言うアントニオだった。
「増えたんだ」
「流行でしょ」
妻はいぶかしむ夫に一言で答えた。
「やっぱり」
「流行か」
「服は流行ものでしょ」
「ああ、俺も服屋だ」
「それなら流行はわかるでしょ」
「当たり前だ、流行が読めないとな」
それこそとだ、アントニオも言う。
「店が潰れる」
「そういうことよ、だからね」
「フラメンコドレスもか」
「色々な種類が増えたのよ」
「そういうことか」
「そう、それでね」
「ああ、売るか」
「売ってそしてね」
そのうえでとだ、イザベラは夫に言葉を返した。
「パンを食べるわよ」
「そうしないと死ぬからな」
「餓え死にしたくないでしょ」
「俺は食うことが好きだ」
これがアントニオの返事だった。
「ついでに言うとワインもな」
「それならよ」
「流行に敏感になってか」
「フ
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