第四章
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その奥のやはり古い部屋に入ってだ、茶を出されてだった。
彼女の話を聞いた、その話はやはり深刻なものだった。
「今この孤児院は御覧になられての通りです」
「そうですか」
「はい」
多くは言わなかった、それで充分だった。
「何かと」
「そうなのですか」
「閉園とまではいかないですが」
「それでもですね」
「何かと苦しい状況です」
「そうなのですね」
「何とか。子供達の為にと思っていますが」
孤児院にいるその子供達のことを思っての言葉だった。
「しかし」
「そうですか」
「そうした状況です」
「わかりました」
ここでだ、不意にだった。
伊達は思いついてだ、浅香に尋ねた。
「この孤児院の住所と電話番号を教えて頂きますか」
「この孤児院の」
「はい、お願い出来ますか」
「それでは」
少し考えてからだ、浅香は伊達に答えた。
「今からメモをお渡しします」
「有り難うございます」
この時はメモも受け取ってそれで終わりだった、だが。
浅香と別れの挨拶をして孤児院を後にしてランニングをしている最中だ、彼は孤児院と彼女の話が気になって仕方がなかった。
それでだ、すぐにだった。
ランニングから帰りだ、シャワーを浴びてからだった。浅香に連絡をしたのだった。
「宜しいでしょうか」
「はい、何でしょうか」
「そちらさえ宜しければ」
彼から申し出てだった、そのうえで。
孤児院に寄付をした、それも相当な額を。彼はすぐにそうした。
このことは後事務所の社長には話したが内密にとお願いした。住職には話した。
寺に行きことの一部始終を話した、そうしてから彼に問うた。
「思い立ったらすぐにでした」
「決断されてですか」
「はい、誰にも相談せずに」
そのうえであることをだ、住職に話したのだ。
「孤児院の建物を建て替えられるだけの額を」
「相当だったと思いますが」
「お金はありますので」
「これまで稼いだものがですか」
「そうです、テレビに出た分やCMのギャラもありますので」
それで金はかなり持っているのだ、寄付をした今でもかなりある。
「困っていないので」
「それでどれだけの寄付を」
「これだけのものを」
その額をだ、伊達は住職に話した。
「寄付させてもらいました」
「そうですか、それだけ出されましたか」
「そうです」
「それだけのものを出されるとなりますと」
住職はその額を聞いて少し驚いた顔になって答えた。
「相当ですが」
「しかしです」
「それでもですか」
「その孤児院には必要と思い」
「出されたのですか」
「そうです」
その通りだというのだ。
「そうしました」
「それはまたかなりのことをされましたね」
「そう言って頂けますか」
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