第三章
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「そのつもりです」
「それでは是非です」
「行かれますね」
「そうします、ただ」
「ただ?」
「申し遅れましたが私はリチャド=オーフェルといいます」
「オーフェルさんですか」
「アメリカ陸軍大尉です」
オーフェルはこう答えた。見れば高い鼻に茶色がかった金髪を丁寧に整えている青い目の美男子だ。軍服もよく似合っている長身で脚も長い。
「私は先日ベルリンに行ってきました」
「そうなのですか」
「そして今回ベルリンに行かれたい方をです」
「案内してくれるのですね」
「そうです」
グラッグスに話すのだった。
「そうさせてもらいます」
「では宜しくお願いします」
グラッグスはオーフェルに紳士そのものの対応で返した。
「ベルリンでも」
「はい、それでは」
オーフェルはグラッグスに暗い顔で応えた。その暗い顔を見てだった。グラッグスは気になったそのことをあえて尋ねた。
「ベルリンの受けた被害は大きいですが」
「戦争によってですね」
「相当なものだと聞いていますが」
このことは事実としてだ、グラッグスは受け止めているのだ。
「西部の比ではないと」
「はい」
オーフェルは確かな顔で答えた。
「そのことは」
「やはりそうですか」
「全てが瓦礫の山になっています」
「ドイツ軍の抵抗も激しかったですし」
「ヒトラーが最後まで立て篭っていました」
オーフェルはこのことは軍人らしく確かな声で答えた。
「それはその通りですが」
「けれど、ですか」
「それだけではないです」
「ベルリンの受けた被害は」
「そのことを御覧になって下さい」
「何かよくわかりませんが」
「今のベルリンを」
オーフェルはこう言うのだった、そしてだった。
グラッグスはピクニックに行く様にうきうきとしてだった、オーフェルや他のベルリン行きを希望した学者達と共にだった。
ベルリン行きの飛行機に向かった、その眼下を飛行機の窓から観てだった。
グラッグスは悲しい顔になってこう言った。
「戦乱は痛ましいですね」
「はい、確かに」
「日本も相当なことになっていますね」
「そういえば博士は」
オーフェルはグラッグス隣の席に座って下の風景を見ている彼に言った。
「平和についても」
「はい、いつも考えていてです」
「そのうえで政治学を語られていますね」
「敵国とはいえです」
戦う相手、だがそれでもというのだ。
「やはり戦火の被害はです」
「痛ましいことだというのです」
「ですか」
「ドイツのことも日本のことも」
「痛ましいですね」
こう言うのだった。
「非常に、ただ私のことはご存知だったのですね」
「以前からお名前は聞いていました」
政治学者としてのグラッグスのそれをというのだ。
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