第一章
[2]次話
指切りげんまん
村山十和子と辻良美は幼稚園年長の頃十和子の家で一緒にテレビを観てだ、阪神タイガースが読売ジャイアンツに負けてだ。
悲しい気持ちになった、そして。
十和子の父や兄が怒るのも観てだ、二人で話した。
「ねえ、今日はね」
「うん、負けたね」
「阪神巨人に負けたね」
「それも逆転負けなんてね」
「もう観ていてね」
「がっかりしたわよ」
こう二人で話すのだった。
「それも終盤で負けるなんて」
「それも二点取られてよ」
「零点に抑えてたらよかったのに」
「こっちもせめて三点取ってたら」
人類普遍の敵にして戦後日本のモラル崩壊、病理の象徴と言っていい忌まわしき存在である巨人に負けなかったというのだ。
「勝てたのに」
「残念よね」
「阪神はいつもこうなんだよ」
二人にだ、十和子の父が顔を顰めさせて答えた。
「今日は一対二で負けただろ」
「うん、点数はね」
「そうだったわ」
「点差はわかるよな」
野球のそれがとだ、父は二人にこのことも尋ねた。
「野球は多く取った方が勝つんだよ」
「それで阪神は負けたのね」
「そうだったのね」
「そうだよ、こっちが三点取るか」
実に口惜しい感じでの言葉だった。
「相手を一点に抑えていたら」
「阪神勝っていたのね」
「そうだったのね」
「とにかくいつもこうだ、阪神の負けはな」
こちらは点が取れず相手に余計に点を取られてというのだ。
「負けるんだよ、やれやれだよ」
「じゃあ阪神がもっと点を取れて」
「それで抑えていればいいのね」
「そうだよ、何処かにいいバッターともっといいピッチャーいないか」
心からの言葉だった。
「本当にな」
「つまり野球って」
「相手よりも一点よりも多く取って」
「一点でも少なく抑えればいいのね」
「そうして勝てばいいのね」
「つまりは」
「どんなスポーツでもそうだよ」
今度は十和子の兄が二人に言って来た。
「相手より多く点を取って」
「相手を抑える」
「そうすればいいのね」
「そうだよ、そうすれば勝てるからな」
こう二人に話すのだった、そして。
二人はその話を聞いてだ、それから。
野球をしていないけれどだ、二人で話した。
十和子からだ、良美に言った。
「ねえ、私達が阪神に入って」
「そしてよね」
「一点でも多く取って」
「一点でも抑えて」
「そうしてね」
「阪神勝たせようね」
こう二人で話したでだった、そして。
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