第6章 流されて異界
第132話 異邦人
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のような物を感じさせる事はありません。
彼女が迷いに近い感情を発するのは俺を見つめている時だけ。
理由は……。彼女が迷っている内容に関しては、色々と思い当たる部分があり過ぎてひとつに絞る事が出来ない。例えば、先ほどハルヒと交わした会話の内容。今宵、これから起きるであろう事件への対処方法。俺に対する感情。
そして、俺と彼女の未来……。
ただ、その迷いに対して直接助言は出来なくても、多少、解決する為に前向きな気分にしてやる事は出来るかも知れない。
そう考え、彼女に触れている右手に軽く能力を籠める俺。同時に手の平に熱が発生。
彼女が生きて動く為には自ら生成出来る気だけでは足りず、霊道を通じて俺から供給される精気が必要となる。つまり、その彼女の体内を巡って居る精気……龍気を活性化させてやれば、有希は好調になる。
俺自身が気の扱いに多少、不器用なトコロがあるので本来は他人の気の調整など行わないのですが、有希とタバサが相手なら問題ありません。
彼女の体内を巡っている気は、元々俺自身が生成した精気ですから。
これで、彼女は気分が晴れて、少しは前向きに考える事が出来るようになるでしょう。
上目使いに俺を見つめる有希。
彼女の頭に右手を置き、彼女と視線を交わらせたままの姿勢を貫く俺。
普段通り……彼女と暮らし始めてから繰り返される沈黙の時間。ただ、決して違和感のある物でもない。むしろ、彼女やタバサが創り出す沈黙は俺に取って心地良い物である。
少女はそのまま沈黙を続けた。
そして、俺もそのまま待ち続けた。
まるで時間自体が流れる事を拒絶したかのような空間。
他に人の気配がしない旅館。ここは現在、冬の大気と、夜の静寂と言う名前の精霊たちが完全に支配する世界。当然、俺の部屋に居るはずのハルヒも、ここまで強く気配を感じさせる事はない。
……いや、ハルヒ自身は、今頃、何故自分が俺の差し出した手を取らなかったのか。その事を反省している事でしょう。
有希から僅かに逸らした意識の端でそう考え、少し苦笑にも似た笑みを浮かべる俺。
もっとも、あのツンデレ気質のへそ曲がり、更に負けず嫌いが素直に動く事が出来ないだろう、と判断してコチラが素直に行動したのです。
確かに……。確かに、あの場には俺とハルヒしか居ませんでした。
……が、しかし、あの場には俺が居て、ハルヒが居たのです。
あいつが自分の気持ちに素直に行動する事に抵抗があって当然。あの場には二人分の視線が存在していたのだから。妙に高飛車な態度に出なかっただけでも、それだけ彼女が失調状態だったとみて良い。
もし、あの場で俺がもう一歩余計に踏み込めば、なし崩し的に――例えば、あんたがそんなに言うのなら的な、妙に上から目線の
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