暁 〜小説投稿サイト〜
竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
縁の糸が絡まりすぎて動けないとか
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いるのはこのお話の主人公(ヒロイン)、竜門珠希その人である。


「っま、待って……匂坂、くんっ。……っふ。こ、これ以上……っはぁっ!?」
「大丈夫だって。竜門さんなら」
「はぁ……っ。ん、っく……。も、もう無理ぃ……っ!!」

 状況が状況なら男も女もあらぬ妄想であらぬ箇所をカタくさせてしまうほど艶めいた声を上げる珠希の後頭部から声をかけてきたのはクラス委員の匂坂雅紀。

 人当たりのいい雰囲気と表情をもってして自由にスクールカーストを移動し、人脈を着実に広げているという稀有なスキルを持った……今はドSの容貌(かお)を見せる聖人ぶった大根役者である。

「いっ、痛いっ! 痛いからっ! だから……もう、やめ……っ」
「な、なあ匂坂。お前、これは結構ヤバくね?」
「ん? 別にこれくらい――ほら、竜門さんも頑張って」
「っ、ふぅ、んぁ……っ!? あっ! そ、そこ……っ。そんなにしちゃ……ぁっ!?」

 なぜこんな奴をクラス委員に選んでしまったのかという後悔も若干頭をよぎらせている相武昴の眼前、現役テニス部員の雅紀の手によって帰宅部の珠希は容赦なくその固くなった筋肉を伸ばされていた。

 とはいえ、筋肉の柔軟性は全部が全部、身体能力やケガに直結しない。
 もちろん柔軟性があることに越したことはないのだが、競技によって要求される筋力量は違うし、鍛えるべき筋肉とそれに伴う柔軟性は全く違う。競輪やスピードスケーターは大腿部を、陸上短距離はそこに加えて腕と胸の筋肉を鍛えなければならない。
 簡単な話、長距離を走るマラソン選手に、物を遠くに投げるための筋力を求めても仕方のないことである。逆に無駄な筋肉をつけるとアスリートとしての能力を著しく低下させることになりかねないのが事実である。


 あと、ヒロインが顔赤らめて苦しそうに喘いでいるからって、すぐイヤラしい想像するんじゃないぞ、良い子のみんなは。
 今はまだ、体育の授業中なんだから。



「よーし、柔軟終わり!」
「ああ、終わっちゃったか」

 体育教師の短い笛の音を合図に、柔軟体操に名を借りた雅紀の、三流大根役者と罵られたことに対する珠希への報復は終焉を告げた。

「っ、はぁぁぁぁぁぁ……んっ」

 報復……ではなくハードな柔軟体操から解放された珠希は紅潮した顔を隠す気力すらなく、力ない息を吐き続けながら体育館のフロアに横になる。
 なお、冷たいフローリングの心地よさに思わず漏れた珠希の声がやけに艶めかしく感じたのはこの場にいる男だけではなかった、と珠希の矜持のために書き記しておこう。


「見てらんねえな、おい」

 痛いくらい突き刺さる男子勢の視線にも気づかない、窮鼠猫を噛みまくっている小心者を前に昴はさすがに昨日の珠希のカミン
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ