第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
縁の糸が絡まりすぎて動けないとか
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しいんですけど!?」
体育教師の言葉を追い風に、漫画にあるような後光がかったエフェクトを背後に出現させ、スクールカーストの階層を自在に移動する普段の雰囲気に拍車をかける雅紀の前に、珠希は何とか抵抗を試みる。
――柔軟体操。
それは否応なしに相手の身体に密着する可能性が格段に上昇する行為である。
決して珠希は雅紀のことを嫌っているわけではなく、手足や肩くらいなら親密な異性から触れられることに拒否感があるわけでもないが、雅紀との関係が親密かどうかといわれると疑問符が付く。しかも、新入生対象のオリエンテーリングなんてのがあったにもかかわらず、今の今までまともに喋ったことがあるのは星河と昴くらいという有様なのだから、他の男子に至っては言わずもがな、だ。
「え? そう? じゃあどうしたらいいんだ相武くん?」
「気にすんな匂坂。この女に手を出したら逆にお前が殺されんぞ」
「え? そうなの?」
「この女、たぶん喧嘩慣れしてる」
「えっ?」
「え? あ、ちょ、待っ……。昴くんっ!?」
うわぁぁぁっ!!
このヤロウ、さりげなくあたしの過去暴露しやがったし!?
てかあたしは降ってくる火の粉を払おうとしただけだし。
いや、そりゃあ、時たまやりすぎちゃった感はあるにしてもさ。
――とにかく、目立つにしたって悪目立ちする方向だけは避けようとしてたのにっ!
「あ、じゃあやめようかな」
「手ぇ出す気だったんかいっ!」
「冗談だよ。軽いイタリアンジョーク」
「なんでイタリア? てか誤解招くからイタリアの人に謝れ!」
「竜門っ! 授業の邪魔するなら出て行ってもらうぞ」
「ぅえ? そ、それは困ります……」
「さ、竜門さん。これはもう俺たちと組んだほうがよくない?」
「くっ……」
かの「72」とは違う意味で言葉を飲み込まざるを得ない状況に陥ってしまった「93」の珠希は、仕方なく――あくまで、仕方なく。表面上は好意を受け取る素振りで――雅紀の誘いの言葉に乗っかることにした。
そうでなければ、特別狙っているわけでもないが、皆勤賞に早くもケチが付けられてしまう気がした。
「……この詐欺師め」
「竜門さん。そこは舞台役者と言ってくれないかな?」
スクールカーストの中でルーザーにもなれなかった真性ルーザーの、敗北の弁ならぬ負け惜しみの言葉すら雅紀の地獄耳は聞き取ってきたが、本来、口が達者なのは男ではなく女である。
「黙れ三流大根」
この珠希の強烈なカウンターに、雅紀の聖人ぶった表情にわずかながらヒビが入った。
それから程なく――。
「っあ゛い゛だだだぁ……っ!!」
そんな、女子高生らしからぬ声を上げて
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