巻ノ二十四 鎌倉その十
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「真田家もとな」
「ではあの家も」
「調べますか」
「そちらにも行ってもらう、だが」
それでもとだ、男はふとだった。
その顔を曇らせてだ、姿を見せていない周りの者達に話した。
「殿は伊達家にも御主達を行かせたいそうじゃが」
「伊達家ですか」
「あの家にもですか」
「我等を送る」
「流石は殿ですな」
「わしは羽柴家もと申し上げたが」
こうも言ったのだった。
「だが」
「それでもですか」
「羽柴家についてはですか」
「人をやらぬと」
「我等を」
「そう仰っている」
こう周りに言うのだった。
「だから御主達は上方には行かぬ」
「あちらにはですか」
「行くことはありませんか」
「我等は」
「西国のそちらまでは」
「殿は天下を望んではおらぬ」
そうだというのだ。
「この関東を手中に収められることは考えておられてもな」
「西国のことは、ですか」
「目を向けておられませぬか」
「上方には一切じゃ」
それこそという口調だった、まさに。
「興味がおりではなくな」
「だからですか」
「羽柴家にもですか」
「人をやらない」
「左様ですか」
「そうじゃ、それがな」
どうにもとも言うのだった。
「わしには気になる」
「何でも羽柴殿は前右府殿の様にですな」
「なると言われていますな」
「天下人に」
「そうとも」
「そうなるであろう、そして天下はな」
それはとも言うのだった。
「西国だけではない」
「東国も、ですな」
「この関東も天下」
「では前右府殿の様にですか」
「東国に兵を送ってきますか」
「そうしてくるやもな」
これが男の読みだった。
「今はまだとてもじゃがな」
「上方は落ち着いていませぬな」
「前右府殿が倒れられ明智殿が討たれ」
「羽柴殿に傾いていても」
「まだ柴田殿がおられますし」
「そうじゃ」
だからこそとだとだ、男は周りに述べた。そうしたことも全て頭の中に入れていることが言葉だけでなく顔にも出ている。
「上方が落ち着くのに暫くかかりじゃ」
「この関東に来るのは」
「それからですな」
「そうじゃ、先じゃが」
しかしというのだった。
「必ず来るであろう」
「だからですな」
「西国、羽柴殿のことも」
「我等が行ってそのうえで」
「見るべきですか」
「そう思う、我等のうち誰も上方には行っておらぬ」
それこそ一人もというのだ。
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