巻ノ二十四 鎌倉その八
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「全ては輪廻の中にあるのじゃ」
「それから逃れようと思えば」
「やはり解脱するしかないですか」
「栄枯盛衰から逃れるには」
「それしかありませぬか」
「そうであろうな、しかしこの世におるならば」
人の世、そこにというのだ。
「やはりな」
「栄枯盛衰はですか」
「避けられぬ」
「栄えそして衰え」
「最後は消えますか」
「そういうことじゃ、だから鎌倉幕府も滅んだ」
最後はというのだ。
「そして今はな」
「この様にですな」
「何も残っておらぬ」
「そうなりましたか」
「そうじゃ、室町幕府も滅んだしじゃ」
それにとだ、幸村はその言葉をさらに続けた。
「前右府殿もな」
「滅んだ」
「それも栄枯盛衰ですか」
「あの方についても」
「あの方は人間五十年といつも言われていたという」
このことは天下に知られている、信長は平家物語に出て来る平敦盛のことを常に意識していて彼の舞を舞っていたのだ。
「あの方もわかっておられたのであろう」
「栄枯盛衰」
「人はそれから逃れられないことを」
「そのことをですか」
「そうであろうな」
こう言うのだった、家臣達に。
「平家物語はまさにそれを書いたものであるが」
「だからこそ人間五十年」
「驕れる人も久しからず」
「それが人の世ですか」
「そう思うと無常じゃ」
幸村の言葉は実際に今は悲しさも入っていた、そうした言葉だった。
「この世はな」
「ですな」
「それ故に鎌倉幕府もなくなり」
「そしてですか」
「その他のものも」
「消えるのじゃ、ではな」
幸村は家臣達とここまで話してだ、さらに言った。
「次に行く場所は小田原じゃ」
「その小田原城ですな」
「天下で最も大きな城と言われる」
「あの巨城にですか」
「行きまするか」
「そうしよう、これよりな」
こう言ってだ、幸村は北条家の屋敷があった場所の前から踵を返し再び歩きはじめた。十人の家臣達もそれに続いて皆で小田原に向かった。
その幸村についてだ、小田原においてだ。
清海や伊佐に匹敵するまでに大柄な男がだ、ある屋敷の一室で茶を飲みながらだった。何者かと話をしていた。
「ふむ、そうか」
「はい、真田家のご次男殿はです」
「箱根八里を越えられてです」
「伊豆に入られ」
「今は鎌倉です」
「あの街に入られてです」
「見物をしておられます」
「あの街を」
声達は大柄な男に次々と述べてきていた、何処からか。
「特におかしな様子はありませぬ」
「漁村で海を荒らしている鮫達と退治していましたが」
「それでもです」
「特にです」
「おかしなことはしておりませぬ」
「人助けはしておりますが」
「そうか、ならよい」
男はここまで聞いてく言った。
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