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コアフ
第一章
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                 コアフ
 イギリス、正確に言えばバーミンガムから転勤してきたガウェイン=グラッドレーはパリにいて少しシニカルにだ、同僚のジョアン=ジルマリルに言った。
「思っていた通りだよ」
「奇麗な街だというんだね」
「実にね」
 茶色の丁寧に整えた髪に彫の深い顔立ち、そして目はエメラルドの色だ。唇は薄く背は一七八程で見事なイギリス製の暗い色のスーツが「似合っている。
「写真で見た通りだよ」
「そしてコーヒーが美味い」
 今度はジョアンが言った、彼は蜂蜜色の髪をセットしていてブラウンの目である。顔はやや彫が浅いが洒落た感じだ。背はガウェインと同じ位だが彼よりは痩せていてそしてスーツはフランス製だ。それぞれの出身国のスーツを着ているのだ。
 二人はカルチェ=ラタンのカフェの中から町並みや行き交う人達を見つつ仕事帰りの一時を楽しんでいる。そこでコーヒーを飲んでいるのだ。
 その中でだ、ジョアンはコーヒーを飲みつつ言うのだ。
「この通りね」
「そう、いい街だね」
「女性達は美人揃いでしかもファッションはいい」
「そうだね、花ばかりだよ」
「最高だろ、パリは」
「バーミンガムの次に最高だよ」 
 笑って返したガウェインだった。
「まさにね」
「そういうことだね」
「紅茶はないんだね」
「君が今飲んでいるものがそうじゃないか」
「イギリスの紅茶はないんだね」
 こうした意味でないというのだ。
「イギリスのあのミルクティーがね」
「そのミルクティーは駄目かな」
「違うね、イギリスのものとは」
「あの国の紅茶より遥かに美味しい筈だよ」
「フランスの紅茶はだね」
「フランス、特にこのパリにおいて」
 優雅な仕草で余裕を以てだ、ジョアンは言った。
「最高でないものは何一つとしてないよ」
「おやおや、自信家だね」
「その自信は事実に裏打ちされているんだよ」
 彼のそれはというのだ。
「まさにね」
「それじゃあだね」
「そう、紅茶にしても」 
 ガウェインが今飲んでいるそれもというのだ。
「この地球上で最高の紅茶だよ」
「美味しくない筈がないんだね」
「少なくともイギリスのものよりはね」
「僕が思うにね」
 ここでだ、こんなことを言ったガウェインだった。
「パリはバーミンガムの次に最高の街で君は最高の仕事仲間であり友人だよ」
「それはどうも」
「しかしね」
 ガウェインは端整で折り目正しい仕草である。
「そのパリ自慢は望ましくはないね」
「事実を言っていてもかな」
「僕が思う事実と君が思う事実は違うよ」
 その二つはというのだ。
「君が思う事実をしきりに自慢することは頂けないね」
「それは友人としての忠告かな」
「そうだよ、そもそもね」
 ガウェインは
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