『2人の戦争』
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変わる世界と変わらぬ思い……。
かつて数多くの妖精たちと、それを守護する『龍』たちとの壮絶な戦争に勝利し、覇権を得た人間。
ライトエルフ、ダークエルフ、ドワーフ、ゴブリン、ブラックゴブリン、グリーンオーク、
ブラッドオーク、時に隣人であり時に敵対者であった妖精たちは殆どが死に絶え、姿を消していた。
『ラジアータ王国』
かつての戦争の始まりの地だった王国。王が治め、騎士団が守護し、民間の『ギルド』が人々の生活に根差していた。
彼らの多くは、妖精にも龍にも殆ど関心が無かった。
日々の糧、趣味、恋、直面すべき問題は無限にある。戦争の原因も、結果も、その真実も、一時の興奮と共に忘れ去られるものでしかない。
だが、そうでないものいる。
異変に気付く知恵者、特異な立ち位置の者、そして、戦争の当事者たち。
渦中にあった彼らが時折集まると、やはりその話題は出た。後悔、武勇伝、懐古、話題こそ様々だが、決まって出る二人の名があった。
リドリー・ティンバーレイク。
前大臣ジャスネの娘。
4大貴族にして、騎士団長でありながらも妖精に与した『裏切者』。
ジャック・ラッセル。
『龍』を2体葬った少年。のちに水龍を斃し、『龍殺し』の名でよばれた英雄『ケアン・ラッセル』の息子だと知られ、
『龍殺し』の異名を受け継いだ。
リドリーは、最終決戦とよばれた白夜の都での戦いにて果てた。
遺体は『裏切者』として家墓に没するを許されず、離れた地にて埋められている。今は顧みられることもなく、世捨て人となった父以外に訪れる者もいない。
ジャックは消えた。戦争が終わって間をおかず。
ギルドも含め騎士団すら動員された大捜索も実を結ばなかった。
2人が語られるのは数奇な運命によってだった、同期に騎士になり、戦争のきっかけに立ち会い、最後は死に別たれた。否応なく、人々の好奇を掻き立てる。
最も近しいのは、二人が属していた『桃色豚闘士団』団長ガンツ・ロートシルトだが、彼も
騎士団解任後に一時期は盗賊ギルド『ヴォイド・コミュニティー』に所属も、失踪を遂げている。
不名誉な『反逆者』に王国は口を閉ざし、『龍殺し』を知る人々が思い出すのは、快活で、どこか抜けた愛らしい少年の姿だけだった。
故に誰も気づかなかった。
リドリーの墓の、父以外の者による花に。
ラジアータへ足を踏み入れた、とある少年の姿にも……。
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