暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
戦場戦塵を往く
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切の色味も艶もない真っ白な装甲板は、漆黒よりもなお黒い、闇を凝集させたような黒槍の一撃を、やはり避けようともせずに真正面から受け止める。
グギリ、という嫌な音が手首の辺りから響く。
叩きつけた運動エネルギーの全てが反射され、その負荷に耐えきれなくなった関節の悲鳴だ。
元来どんな物質だろうと、普遍的に衝撃吸収性を持っている。例えば、コンクリート塊やリノリウムの床でさえ、受けたエネルギーを百パーセント返すということはないのだ。
だが、マークUの有機装甲は違う。
純白のその表面に傷すらつけずに、受けた運動エネルギーのベクトルだけを真反対にしてきっちりと返してくるのだ。
生物の関節はそれほど応用性に富んでいない。本来の可動域外からの圧力には得てして脆く、弱い。
「づッ……ァああああッッ!!」
ギシギヂ、と。
真反対のベクトルを持つ二つのエネルギーの塊がぶつかり、甚大な余波をまき散らす。四方八方、向きなど関係なく自由気ままに解き放たれたそれらは、空間そのものに干渉し、不気味な亀裂を発現させた。
だが。
「ッ――――ぐ…ぅッ!」
眼前にそびえる壁は、揺るがない。
正確には、装甲の素材の硬度が桁外れに高いという訳ではない。マークUの元となっているのは、フェイバルの得物である針――――《
檮?
(
とうこつ
)
》だ。遠距離武器というそのカテゴライズ上、相対的に防御力は落ちるのが必然である。
だが、紛れもなく傷ついた手に帰ってくるのは、手応えではなく痛みだけ。
それは、拒否であり拒絶であり、同時に拒止であった。
それは、拒み、拒ぎ、拒む、絶壁であり絶望そのものであった。
だが。
それでも。
少年は奮然と、眼前の壁に前進した。
もはや小柄なアバターは、システムで規定されている仮想重力の影響すら受け付けていない。落ちる、という現象が、レンの魂が放つ熱によって常時
上書き
(
オーバーライド
)
されているのだ。
イマジネーションによって発現する
心意
(
インカーネイト
)
システムにおいて、イメージはすなわち力となる。マイナスイメージは自身の弱体化しか招かない。
他ならない自分自身を鼓舞するために、ノドが変な風に痙攣するほどの絶叫を迸らせながら、レンは槍と一体化したかのように唸る腕を突き出す。
槍と壁。
その接地点で、決して可視化できない力場のようなものが球形に広がっていくのを少年は感じた。同時、どうしようもないほどに槍本体が軋んだことも。
それを正面から受け止めれば、おそらくこの刹那的な硬直状態は解除され、体格的に劣るレンは吹き飛ばされてしまうだろう。そうなれば黒槍はその形状を維持することができなくなってレンの攻撃力はダウンし、すでに引きつけ役に回ってい
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