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大海原でつかまえて
06.重い切り札
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に抱えており、執務室に入ると提督を見据え、落ち着き払ってこういう。

「提督、先ほど届いたそうです。明石さんから受領しました」
「了解した。準備して持ってきてくれ」

 大淀さんは『分かりました』とだけ言うと、今度は執務室の奥の扉に消えていった。あそこは昨晩、提督と岸田が大淀さんから罵倒という名のご褒美をもらっていた司令室だ。でも見てる感じだと、大淀さんそういう人に見えないんだけどなぁ……

「まぁ、な。言葉は柔らかいんだけど、大淀は一撃が重いんだよ」
「は、はぁ……」
「龍田や叢雲もいいんだが……属性をつけるとしたら叢雲は切断系で龍田は刺突系、で大淀は打撃系だな」
「いや、そんなステータス情報はいらないです」
「そうか。……いや、引くなよ」

 大淀さんが司令室から戻ってきた。その手には真っ白な化粧箱のようなものを持っている。

「漫談はここまでだ。シュウ、単刀直入に聞くぞ。お前は、比叡のことが好きか?」
「うん」
「比叡を愛しているか?」
「うん」
「例え今回は比叡に会えなくなるかもしれないとしても……それでも比叡を助けてくれるか?」
「……」

 提督はこちらをまっすぐに見据えていた。

 これはさすがに答えに詰まった。たとえ自ら行くつもりであったとしても、やはり言葉で『会えないかもしれない』と確認されると不安にはなる。

 もし提督が岸田並のイケメンだとすれば、本当は僕を出撃させたくなかったはずだ。僕の手で直接姉ちゃんを救わせたくなかったはずだ。そうすれば、姉ちゃんが助かった後、ぼくが向こうの世界に戻る可能性が低くなる。僕は助けてないのだから。

 にも関わらず、僕は出撃を許された。ひょっとすると、姉ちゃんを助けるための最後のファクターが僕なのかもしれない。だとすれば、僕が出撃することで姉ちゃんを助けることができる。でも僕は、姉ちゃんと会うことが出来ない。

 僕が答えを出すのに手間取っている間、提督は僕をずっと見守ってくれていた。その表情には、即答できないことへの怒りやイライラはない。

「分かった。即答されるより、逆に比叡を大切に思ってくれていることが伝わった。……大淀」
「はい。橋立様、こちらを……」

 大淀さんが僕の隣に立ってその手に持った化粧箱と、一枚の書類を僕の前に置いた。その純白の化粧箱はとても上等な作りで、ひと目で中身が特別な品だと言うことが分かる。

「それが今回の作戦の最後の切り札になる。箱を開けて、中の物を取り出せ」

 提督にそう促され、言われるままに箱を開けて中を覗いた。中にはワインレッドの小箱がひとつ、クッションに包まれて入っている。それを取り出して手に持つと、ずっしりとした重みが感じられた。

 小箱を手に取る。その途端、ほんの少しだけ小
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