第十六章 ド・オルニエールの安穏
第四話 抱擁
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てしまうわ」
オルレアン公夫人の言葉に、ふらふらふらつきながらもイザベラが椅子に座ると、同じようにタバサとシルフィードも席についた。しれっと席につくシルフィードは、普通ならば同席を許される筈がないのだが、この場でそれに否を唱える者はいないことから黙認されていた。
呆然と椅子に座っていたイザベラだったが、内心の混乱が一段落着いたのか、テーブルの下でギュッと両手を握り締めると、覚悟を決めた顔で口を開いた。
「わたしを―――わたしをお咎めにはならないのですか?」
「咎める、ですか? それはまた物騒な。どうしてわたしが姪のあなたを咎める事になるのです?」
「どうしてって―――わたしは、あなたの夫を殺し、あなたの心を失わせた男の娘なのですよっ!?」
「そうですね。でも、結局わたくしの心は戻りました」
「あなたの心だけは、です。オルレアン公は戻ってきません」
イザベラの言葉に、オルレアン公夫人は悲しげな顔をすると目を閉じた。
「ええ、わかっています……わかっているのです。どれだけ夢であればと思いましたが、わたくしは全てを覚えています」
「なら―――ならどうしてっ!?」
両手で頭を抱えながら激しく首を横に振るイザベラに、オルレアン公夫人は穏やかな声で語りかけてきた。
「わたくしたちは未来に生きねばなりません。過去はどうしても変える事はできません。しかし、これからは変えていくことはできます」
オルレアン公夫人は自分の娘―――タバサに顔を向ける。
「これは娘―――陛下にもよく言って聞かせましたが、生前夫は……オルレアン公は言っていました。『この国をよくしなければならない』と。ハルケギニアの中でも随一の大国であるガリアですが、その巨大さが災いし、なかなか一つにまとまるということが出来ませんでした。貴族たちはかつての誇りを忘れ、己の利益のみを求めている始末。それを見越しての言葉だったのでしょう。そしてイザベラ。あなたには信じられないかもしれませんが、あなたの父君も、昔は同じように考えていたのですよ。しかし、何時しかその真心を見失ってしまった……」
「父が……そのようなことを……っ、しかし……わたしには、信じられません……」
国を良くしようとする父の姿を思い浮かぶことが出来ず、悲しげに顔を俯かせるイザベラに、オルレアン公夫人は微笑み掛けた。
「なら、話してみればいいのです。時間はたっぷりとあります。もうそろそろワインを持ってここに来ると思うのですが……」
「はい…………え? 話す? あ、あの、叔母上? 話すとは一体誰と?」
戸惑うイザベラに向かって、オルレアン公夫人は童女のように小首を傾げて見せた。
「何を言っているのです? ここは家族で食事をとるための場所。なら、あなたの父君
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