オペラセリアのエピローグ 5
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そ、貴女を幸せに微笑ませてあげたい。
一緒に居てください。
奴隷と主人でも、夫婦でも、確かな繋がりがあればそれで良い。
愛しています、ロザリア。
私の女神。
私にとっての、『必要不可欠なもの』。
「バーデルの一番都市?」
「ええ。私は、泉へ向かう途中の村以降、居住地に足跡を残していません。巡礼を目的に頂いた許可証なので、どこかの教会には顔を出す必要があるのですが、地理と経過時間と人間らしい行動を考慮すると、中央教会の辺りが一番自然なんです」
「ふーん。別に良いけど」
涙が乾くのを待って、二人でのそのそと立ち上がる。
見上げた空は、黄色味が強い赤色だ。明日は晴れるかな。
「んじゃ、行くか」
長衣の膝部分に付いた砂を払い、「ん。」と右手を差し出すロザリア。
「……お願いします」
接触していなくても飛ばせるのでは? とは、言わないでおこう。
なんだかんだで、自分も結構ちゃっかりしている。
細くて柔らかい手を取った瞬間、周囲の景色が変わる。
朽ちた神殿は、目の前に聳える巨大な石壁へ。
背後には、まばらに伸びる木々と、往来が激しい街道を遠く望む平原。
人の動きから察するに、ここは一番都市の外壁の真横か。
「私はここで待ってる。夜になる前に戻ってこなかったら、置いてくぞ」
「はい」
彼女は今、許可証や証明書の類いを一切所持していない。
許可証が無くても空間を跳べば入れるが、人目につく可能性がある場所へ近寄るのは極力避けたいと、彼女自身でも言っていた。
特に大きな街や都では、別行動もやむを得ない。
少女一人を暗闇に置き去ることには抵抗を感じるが。
とにかく、急いで用事を済ませて戻ろう。
小走りで承認待ちの列に加わり。
少々手間取りはしたものの、無事に都市の内側へと踏み込む。
石造りの三階建て集合住宅が中心なのかな。
何らかの防水措置が施されているであろう屋根だが。
見た目はただの、少し厚めな木材だ。
白と薄茶色で統一された街並みは、どこか温かさを感じさせる。
しかし、店が閉まり始める時間帯にしては、やけに人が多い。
何事かと聞き耳を立ててみれば、薄い緑色に発光していた雪がどうこうと噂が行き交っている。
ああ、忘れていた。
ロザリアが迂闊に人間世界へ近寄れない理由の一つ。
レゾネクトとの契約変更時、世界中に降らせたであろう雪があったんだ。
ほんの短い時間で消えてしまった、アリア色に光る雪。
あれがおかしな騒動を呼ぶきっかけにならなければ良いのだけど。
「ようこそ、アルスエルナ教会の信徒クロスツェル殿。我々バーデル教会の信徒は、貴方の来訪を心より歓迎します」
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