第3章 リーザス陥落
第76話 ホッホ峡の決戦X
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まい、その隙に抜けられてしまえば元も子もない。
……それに、ずっと後方の高見から、見物しているであろう男は、こう言うミスを決して見逃さないだろう。モンクを言われる未来が鮮明に判るのだ。
「……それより、ユーリさんに迷惑を駆ける訳にはいかない」
そう、ここを抜ければ本隊近くの場所へと躍り出る。そこから一番近いのが、正面から攻めているユーリの部隊だからだ。
「そう、だね。うん。ユーリも頑張ってる筈だから、僕らも頑張らなくちゃ」
かなみの言葉に同調するメナド。その表情が赤くなってしまっているのは、この暗闇でも十分すぎる程、判っていた。
「(あぅぅ………///)」
それに関しては、やはり、複雑極まりないかなみだった。
そして、暫くしての事だ。
「っ!! め、メナド、隠れて!!」
「えっ……!?」
周囲の気配を探ろうと集中していた時に、異常な気配を感じ取り、かなみは メナドの手を引いて慌てて物陰に隠れた。
それが功を成し、この数秒後に現れる者に気取られる事は無かった。
妖しく靡く 漆黒のマント。……暗闇でも十分すぎる程、いや わざとではないか? と思える程目立つ、金色の長い髪。その者の周囲の空間がまるでねじ曲がっているかの様なオーラを携え、歩いている。
「魔人……、アイゼル……」
姿を見た瞬間、背筋にどろりとした嫌な汗が流れ出た。
アイゼルは、ヘルマン軍に帯同し、1人でゆっくりと歩いていた。……気づかれた気配はない。
「(気づいていない……、気を払ってすらない? 今なら背後から………)」
――やれる、か。
汗の滲む指先が、腰の忍者刀に絡む。
当然、それにはメナドも気づいた。
あのリーザス城で 見た魔人。……意識と身体の自由を奪った張本人だといっていい存在だ。ユーリに解放されてなければ、永遠に主君の国に刃を向けていたであろう事実が、苛んでいる。
だが、相手は絶対悪。……絶対強者のアイゼル。
挑んだ所で、結果は見えているのだ。
お互いに確認をし合う、意見を交わし合う余裕この時は一切なかった。
「(で、でも……こ、ここを通したら、本隊が……、ゆー、ゆーり、ゆーりさんが……)」
かなみが思うのは、あの時の事。
魔人サテラ相手に、たった1人で向かわせた、向かわせてしまった時の後悔。……そして、死んでしまったのか、と思ってしまったあの悪夢の光景。
このまま アイゼルを行かせてしまえば、また同じ事になる。
――……いや……今度は……。
そう思った瞬間に、かなみは忍者刀を握る力を上げた。
直ぐにでも、攻めようとしたその時だ。
肩を、掴まれた感覚がしたのは。
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