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八神家の養父切嗣
五話:旅立ち
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んが家に来たのと同じ時期や」
「今の今まで素顔すら現さなかったんだが……今回の失敗(・・)でようやく顔がわれた」

 失敗という言葉に何とも言えない顔をする騎士達。
 当然のことながら切嗣の策が成功していれば自分達は今ここにいない。
 そして、逆に失敗したことで切嗣は自分達の前から姿を消した。
 生きているには生きているだろうがあの失意に沈んだ人間に生きる気力があるとは思えない。
 裏切られたとはいえ、やはり気になってしまうのは家族故だからだろう。

「次元世界のあらゆる紛争地帯で活動して荒稼ぎしていたと言われていたんだが……あの様子を見るに彼は……彼の正義を貫き続けていたんだろうな」

 今回のようなことを幾度となく繰り返してきたのだろうと察して思わず同情してしまう。
 心を殺した機械として生きていた彼はその実、誰よりも優しい心の持ち主だった。
 切嗣の行いを肯定するわけにはいかないが、永遠に救いのない道を歩きながらも世界の為に生き続けたという事実には畏敬の念を覚えてしまう。

「まあ、彼の過去は、今は良い。現状彼は姿をくらましている。こちらに姿を見せる真似はしないだろう。だから、君は誰の指示も受けない自由な選択ができる」
「…………」
「八神はやて、そして守護騎士達に聞きたい。衛宮切嗣に脅しや暗示、強迫紛いの行為は受けていなかったか?」

 黙ったまま真っすぐな瞳で自分を見つめるはやてにクロノは問いかける。
 ここではやてが頷けば、はやてを無罪放免にもっていくことができる。
 騎士達も以前よりも、より良い待遇で管理局に迎えることができるだろう。
 ただ、彼女が衛宮切嗣と、家族であったことを否定さえすれば。



「―――いいえ、全くありません」



 だが、彼女は首を横に振り、力強い言葉でそんなことはなかったと断言した。
 クロノは彼女の言葉にどこか眩しそうに目を細めた後、今度は騎士達に目を向ける。
 騎士達もまた、主と同じように真っすぐな瞳で彼を見つめ返してきた。

「私もそのようなことは一切確認していない」
「ええ、私も見たことも聞いたこともありません」
「あたしも記憶にねーな」
「同じく」

 四人が四人とも同じように首を振る。
 つまりは、彼女達は自由よりも家族としての絆を取ったのだ。
 その決断にクロノは少し頬を緩めるがすぐに引き締めて喉を鳴らす。

「そうか、なら事情聴取はこれで終わりだ。何とかして君達が離れないで済むようには取り計らう。安心してくれ」
「何から何まですんません」
「いや、これが仕事だからね。詳しいことは後で伝えるよ。今は休んでいてくれ」

 クロノは報告書の作成に移るために立ち上がり、ここに来て初めて笑みを見せる。
 その笑顔
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