暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
もう一つの決着
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クを右肩に押し当てる。レシーバーに頬付けをし、レールに残っていたマウントリングとレシーバーリングの残骸を多少強引に取り払う。

何もなくなったレール。フロントサイトも、リアサイトすらない《狙撃》に、思わずシノンは苦笑いを堪え切れなくなった。

これが、狙撃か。

おそらく長いGGO歴の中でも一、二を争うほどの集中力を要求されるこの局面で、狙撃の命ともいえるスコープを、あろうことか敵に打ち砕かれてなくした状態で挑むことになろうとは。

だが、やらねばならない。

あの剣士は、相棒と言った。言ってくれた。

ならば、その呼称に恥じない役割を果たさねばならない。

左眼を閉じ、右目に全神経を集中させる。七百メートル離れた二つの人影の動きが緩やかに減退していく。周囲のオブジェクトが若干の流線型を描き出し、色彩がクリアになる。

経験したことは片手でも足りるだろう。

人銃一体の境地。

ヘカートのウッドストックを通して、冥界の女神の《熱》が伝わってくる。

表面だけが冷えて固まった溶岩のようなそれは、内に秘め、胎動する灼熱を解き放たんとするかのように荒れ狂っていた。

ヘカートU。

数多の戦場を共に駆け抜けてきた、唯一無二の分身にして、戦友。

―――お願い。弱い私に、力を貸して。ここからもう一度立って、歩き出すための力を。

応えはない。

だが、それが信頼の証でもあった。

キッと瞳孔を開き、少女は培った狙撃手の技術を全て開放する。

定数:目標との距離――――約七百メートル。

定数:重力による弾道の下降。

定数:気温――――推定十八度プラスマイナス二度。

定数:気圧――――平地と同じ一気圧。

定数:湿度――――推定三十パーセントほど。

変数:風向き――――南南西から。

変数:風速――――微弱。









全ての要素。

全ての経験。

己の全てを感じた時、むしろ静かにシノンはトリガーガードに掛けていた人差し指を、引き金に掛けた。

途端、システムがその行動を感知、認識し、視界に拍動を基点とするサークルが出現するが――――少女はそれを無視して、遥かを透かし見る。

撃ちはしない。

己の狙撃手たるものの全てをつぎ込んだ、幻影の一弾。

それがシノンの出した唯一の解であり、無二の攻撃であった。

視界の先では、ヘカートから放たれるラインに惑い、体勢を崩した死銃の姿がある。

そしてその体に。

キリトの光剣が深々と食い込んでいくのを、シノンははっきりと目撃した。

「……やっ……た」

幻のような呟きは、じんわりと、だが確実に現実味を帯びる。

魂が抜けそうなほど長い溜
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