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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
二十六話 新星と遺物
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は同じく楽しそうに見ていたが、男性陣はというと……

「……レイシアたのしそう」
「うん、なんかいつもとちょっと違うなぁ」
「あ?お前といるときも十分楽しそうじゃねぇか」
などとセイルを中心に話していた。

────

「おっし!やるぞっ!!」
シスイ・クランベールは張り切っていた。Stヒルデ魔法学院に通う初等科四年生であるこの少年は、ミッドチルダでも有数のお嬢様学校に通っているのがいっそ不似合に思えてくるほどに、ごくごく普通のはしゃぎ盛りの男子である。
ただ、もし彼のあり方にほかの子供たちと違うところを見つけようとするとするなら……それはきっと、本当の意味で本気で「ヒーロー」というものに憧れている、という部分だろう。
おおよそ子供の成長というのは早いものだ。特に、Stヒルデに通うような子供たちはすでに架空と現実という区別が付き始めるくらいには分別を得ており、ヒーローごっこといっても、無意識にそういう“遊び”として以上の認識はない。
が、彼の場合は違った。

シスイ・クランベールの夢は、ヒーローになることである。と、言っても盲目的に自らの正義を振りかざすことを夢にしているわけではない。
どちらかといえば彼の言うヒーローとは「大切な誰かを守る」人間のことを指していた。
シスイは、自分の両親が好きだ。友人が好きで、近所のおじさんおばさんが好きで、学校の先生が好きで、実家のパン屋にやってくる、沢山の顔見知り達のことが好きである。その人々と過ごし、笑い合うこの時間を、「幸せ」と呼ぶことを、彼は知っていた。そして四年前に発生したある事件の影響と経験から、その幸せが、必ずしも「不動のもの」ではないということも、おぼろげにではあるが、聡明な彼には理解できていた。

故に彼は、「守る者」に憧れた。
自らの幸せを守ってくれた空飛ぶ魔法使いたちに憧れ、焦がれ、夢見て、そして、目指した。自分にとっての「大切」を、守ってくれる正義の味方(ヒーロー)。彼にとってそれは、揺らぐことのない夢になりつつあった。
なので……

「この大会に勝って、強いヒーローに、俺はなるっ!!」
両手を振り上げてシスイは叫んだ。
あまりにも子供っぽい発言に周囲でクスクスと微笑みや失笑が上がったが、気にしない。なるったらなるのだ。ぜーったいなるのである。

「げ、元気だね君……」
目の前にいた青年が、困ったように苦笑した。まぁそれはそうだろう。はたから見たら、完全にただの子供か痛い子である。

「けど、僕に勝ってっていうのはいただけないな。僕も負けたくないんでね」
とはいえ、相手がやる気を出しているのにそれに対して全力で応じないというのは、スポーツ選手としては少々いただけない。ので、ということもあり、青年はめのまえの少年のやる気に、答えることにし
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