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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
六 〜邂逅〜
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 (たちま)ち、兵らの間に動揺が走る。

「ひ、土方様!」
「騒ぐな」
「し、しかし」
「……徒に騒いだ者は……斬る」

 無用に騒ぐ者など、我が軍には不要。
 流石に、狼狽していた兵も静かになったようだ。

「稟、風。このあたりに、程遠志以外の黄巾党はいない……そうであったな?」
「はい。念を入れて調べましたので」
「百人以下の小さな集団までも確認していますしねー。間違いないのですよ」
「なら、敵ではないのだろう。となれば、官軍か、若しくは……」

 と、そこに一騎の武者が駆けてきた。
 素肌にサラシを巻き、上着を羽織っただけ……何とも、大胆な装束ではあったが。

「この軍の指揮を執っとるんは、誰や?」

 上方言葉だと?
 はて、本当に面妖な世界としか言えぬな。

「私がそうだ。貴殿は?」
「ウチは張遼ちゅうモンや。あの董卓軍で将をしとる」
「張遼? すると、あの神速の張遼将軍か?」
「よお知っとんな、ウチの事。まぁ、将軍ちゅう大層なモンやあらへんけどな。そういうアンタは?」
「申し遅れた。拙者、この義勇軍を率いる土方と申す」

 私が名乗ると、張遼はひらり、と下馬。
 やはり、張遼も女子(おなご)か。

「挨拶は後でええ。それより、程遠志の黄巾党がおるんはここやろ?」
然様(さよう)。御覧の通り、今まさに戦闘中だがな」
「それでか。ウチらも今夜、攻めかかる準備をしとったんやけど、斥候から賊の動きがおかしい言う報告が入ってな」
「それで、威力偵察に来られた。そういう訳ですかな?」
「へぇ。アンタ、ただの義勇軍ちゃうやろ?」

 感心したような張遼の声。

「さて、それはどうですかな。それよりも張遼殿」
「張遼でええよ。ウチ、堅苦しいのは苦手やねん」
「そうか、では張遼。敵将の程遠志とケ茂だが、どちらも我が軍が討ち取った」
「な、何やて? 自分、寝惚けてへんやろな?」

 張遼は、まじまじと私の顔を覗き込む。

「なら、この賊軍の混乱ぶり、どう説明するのだ?」
「せ、せやったらこないな事している場合ちゃうで! 大将のおらへんあいつらほっといたら……」

 ふむ、そこに気がつくか。

「その事なのだが」
「なんや?」
「敵の本陣は押さえてある。後は、この残存兵をどうするかなのだが」
「……は? ちょい待ち、敵本陣も落としたちゅうんか?」

 信じられぬ、という表情だが……無理もなかろう。

「そうだ。今頃、逃げ込もうとしている賊共を、必死に防いでいるところだろう」
「はー。アンタ、大したモンやな。せやったら、話は別や。ウチらで、掃討戦をやればええっちゅう訳やな?」

 ほう、流石は張遼だ。
 今の愛紗や星に、そこまでの状況判
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