優艶なる王達の茶会にて
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、世界を回すのはいつだってそういった者達だ。
「そも、人以外の介入を以って作る平穏に価値は無い。私達が生きているこの世界を天の箱庭などに……させてたまるもんですか」
弱き人々は願う。天に助けを請い、自らの成長を止めてしまう。抗う力を無くしてしまう。
蔓延し始めた噂が気に喰わなかった。“天の御使い”に縋ろうとする人々に怒りさえ覚える。
――与えられる幸せなど無価値。自らの力で手に入れたモノを愛さずして、何が王か。
神や魔物に縋って得た“まやかし”の世界で満足するのか。
自分は幾多も他者の幸せを奪ってきたというのに。自分だけ特別扱いされて満足するのか。
“同じ名前の別の存在”を幸せに出来たからと満足出来るのか。
やはり、否。
覇王に、華琳に逃げは無い。戦での戦略的な逃走はあるとしても、立ちはだかる現実からの逃げなど存在しない。
「それが貴女の誇りですの? 華琳さん」
「いいえ、これは人として、そして人を率いるモノとしての意地よ」
「救いを待つだけでは手に入らない、ですか」
柔らかく笑った華琳がゆったりと椅子に座る。机の上に肘をついて手を組み、麗羽と視線を合わせた。
「後悔しているかと思ったけれど、あなたは振り返らずにちゃんと前を向いているようね」
「ええ、俯いて前を向かない人間になどなりたくありませんわ。そんな姿を見せてしまえば、夕さんに“無様”と笑われてしまいます」
二人して笑う。
クスリ……口に手を当てる上品な仕草は、麗しさからかどちらも大人びて見えた。
「例えこの先で、多くの愛しいモノを失おうと?」
「命を賭けているモノを使わずして、王には足り得ないですわ」
「誰であろうと、必要があるならば切り捨てることは出来るのかしら?」
「幸せの極地に居る人間であろうと、死んでも遣り切りなさい、と命じることでしょう」
「あなた自身は?」
「元より存在の全てをこの愛しい世界に捧げた身。しかれども、世に平穏が齎されるその時までは、泥を啜り根を食んででも生き延びましょう」
かちゃり、とまた茶器を置いた。どちらも視線は外さず、エメラルドとアイスブルーが交差する。
黙って事の成り行きを見守っていた店長はそこで……聞こえるように音を立てて紅茶を継ぎ足した。
「盛り上がるのはいいのですが、もう少し場を選んで話して欲しいモノですね」
せっかく自分の料理の出るお茶会なのだ。乱世のことよりも彼が作る時間のような……くだらないことでも話して欲しいと店長は思った。
二人して肩を竦めた彼女達は、また茶器を手に取って一口飲んだ。
「ふふ、ごめんなさいね店長。でもこの後は雛里や月と一緒に街を回るし、麗羽と王として話す機会はあまりとれないから、この場だけは許し
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ