優艶なる王達の茶会にて
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されて激励された。忠義を尽くしてくれた彼らの想いは、やり直しなど望んでいない。
袁の王佐は麗羽の成長の為に大切だった母を救う事よりも戦を優先した。今の麗羽を信じて、一緒に幸せになりたかったからだ。
紅揚羽は千を超える袁家を虐殺して悪となった。この世界を変えて、この世界で幸せを掴み取る為に。
二枚看板と謳われた彼女達は今も尚麗羽の為に戦おうとしている。それも全て……この世界で麗羽が幸せに暮らせるようにと。
故に、麗羽は拒絶する。そんな“もしも”を拒絶する。
二度目で幸せになっても彼女にとっては意味がない。
死んだ者を助けられるとしても、命を賭けて戦った者達はもういない。
絶望こそすれ、それでも幸せになろうとするのが人間だ。自分だけが幸せになって、それで自身の罪が許されるわけがない。それでも幸せになりたい等とほざけるわけもない。
何故、名も語られない一人の兵士は救われない。
自分だけが神や魔物から受ける特別扱いで幸せになって満足か? 否、否なのだ。
世界に全てを捧げた袁麗羽は、この世界で生きる人の幸福をこそ願っている。
死に行く想いを掬い、生きる願いを救わずして、彼女はもう許されないし、自分を許すことは出来ない。
「幸せになってくれと、わたくしは袁家が治める地の民に願われましたわ。こんなわたくしに幸せになれと、優しい優しい民達は願った。
死んだ者達はわたくしの描く未来を願っておりました。わたくしが作る平穏な世を夢に見ておりました。わたくしが生きている限り、彼らの夢に終わりは有りません。終わらせてあげませんわ。縋り付いて縋り付いて、この世界の平穏を見届けるまでは死ねません。
皆の想いを無駄にして、踏み躙って……“やり直しに逃げる”なんて……わたくしを見縊って貰っては困りますわね、華琳さん?」
妖艶に嗤う。
覇王よ、お前はどうだと問いかけるように。
敗北で叩き潰された袁の王が持つ覇気は、彼女に届き得る刃となる。
世界に存在を捧げた麗羽の声は、華琳に向ける弾劾にもなる。彼女の声は生きるモノの声、そして……死んでいったモノ達の声でもあるのだから。
――やり直しに逃げることは無い、か。いい答えね。
華琳は満足だった。
河北という広大な土地を任せる頭の成長は望んだ通り。昔の麗羽ならば、“逃げる”選択肢を考えたであろう。今の彼女は目の前を見て、背を向けずに真っ直ぐ立っていた。
「私も同じよ、麗羽。逃げない、引かない、顧みない。自分が生きてきた道を恥じることも、後悔することもしない」
やり直しとは逃げだ。
現実を受け止めず、結果を受け入れられず、絶望から立ち上がることも出来ない人間の弱さ。愛しいモノの死さえ乗り越えて生きるのが人間であり、人々に希望を与え
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