優艶なる王達の茶会にて
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かもしれません。
有力な将が率いる軍事力や暗殺等への対抗を主と出来る紅揚羽、それと飛び抜けた軍師の存在によって袁家を裏返すことも出来て、美羽さんや七乃さんとも結託出来たはず。わたくしがこの大陸を支配してみせようと乗り出すことも出来たかもしれませんわ」
袁家という巨大な勢力を完全に回すことが出来たのなら、天下に一番近かったのは麗羽なのは言うまでもない。
それほど世界の流れは袁家に傾いていたはずで、それがあったからこそ袁家の上層部はこの乱世で賭けを打ったのだ。
答え合わせをするように並べられる“もしも”の話。過ぎ去ったからこそ描ける可能性は、確率は、きっと存在したことだろう。
「“袁紹”と“董卓”は天下を取ることも出来た、と私も過程してるわ。だからこそ聞いてみたい。栄光と輝かしい未来、そして自身にとって最大限の平穏が手に入ると……そうね、人知を超えた何かに誘われたとして……あなたは“やり直したい”?」
どんな答えでも受け入れると、華琳の瞳が物語っていた。
人それぞれの答えに口を挟むことはない。ただ純粋に、彼女は袁家の王がどのような答えを出すのかに興味を持っていた。
しばしの逡巡は瞑目を以ってして。内にある何かを確かめるように、彼女は胸に手を当てた。
「……やり直し。甘美な響きですわね」
小さな微笑。優雅で優美な彼女の笑みは、己の全てを世界に捧げた彼女だけが持てるモノ。
「ですが……否。わたくしはそのお誘いを断固として拒絶いたします」
じっと見据えてくる視線には意思の強さが、語る言の葉には……熱いナニカが乗っていた。
「わたくしの大切な王佐、この手に掛けた数多の同胞、そして今もわたくしと共に生きてくれているあの二人や明さんや臣下達……皆が存在したからこそ今この時がありますわ。
愛しき者達を一人でも多く救えたのなら、夢見た世界が手に入るのなら、それはきっと幸せでしょう、素晴らしいことでしょう。でもわたくしは、“袁麗羽”はそんな“まやかし”の幸福など要りません」
ふっと、華琳も小さな笑みを漏らした。その答えを出せるなら十分だと。
続き、麗羽が首を振った。悲しげに、儚げに。
「わたくし達は、生き残った者達は、この世界で幸せにならなければ意味が無い。
名も語られない一人の兵士は誰かの為に命を賭けましたわ。
愛しき王佐はわたくしの未来の為に命さえ使おうと致しましたわ。
狂い乱れる紅き揚羽蝶は世界を変える為に絶望を乗り越え悪へと堕ちましたわ。
わたくしの愛しい愛しい両腕は……このわたくしを幸せにする為に全てを捧げましたわ。
そんな一つ一つの願いが輝くこの世界で幸せを掴もうとせずして……何が人生っ!」
胸に残る想いがあった。
官渡の最後には兵士に叱咤
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