優艶なる王達の茶会にて
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が乱世に恋をしているというのも的を得ているとは思いませんか? まあ……簡単に言いますと、“好き”ってことですかね」
それ以上は自分で語るべきだと、店長はやんわりと受け流した。
クスクスと笑う華琳は気にせず、首を捻る麗羽に安易な答えを続けることもしなかった。
「そうね、私はこの乱世が好きよ、麗羽。
たった一度の人生で、私という存在をこの世に示し、私の全てを賭けても足りない平穏を思い描くなんて……これほど嬉しくて楽しいことはない。
ただ、その為に摘み取ってしまう命の華もあるけれど、そのモノ達の命は私達の血肉となっている。数多の命を捧げた大切な大切な乱世を私は……」
答え合わせをするように、自分のキモチをしっかりと確かめるように、華琳は少しの間を置いて、不敵に笑った。
――愛してるわ。
言葉には出さなかった。出そうとも思わなかった。語ると軽くなってしまいそうで。この胸に秘めたる想いが、ちっぽけになってしまいそうで。
あの男と二人きりで話した夜のことを、特別に感じてしまっているようで。
同じ意味だと知っている。この感情が秋斗が華琳に向けたモノと同じだと、華琳は分かっている。
穢すことも、貶すことも、蔑むことも出来ない想いの華。故に彼女は彼のことを認めていて、追い駆けることを許したのだ。
じっと見つめる店長の瞳は、心の中を見透かしているかのように澄んでいた。
視線を逸らし、カップだけを手に取ってまた背を向ける。
「ねぇ、麗羽。あなたに気まぐれな問いかけをしてあげる」
「……なんですの?」
唐突な話題変換に首を傾げた麗羽と、また小さな苦笑を漏らした店長。どちらもに聞かせてもいい問いかけを、彼女は投げることにした。
「“例えば”……失われたあなたの王佐と暮らせるように、乱世を遣りなおせるというのなら……あなたはソレを望むのか否か」
絶対に有り得ないもしもの話。人生のやり直しなど起こるわけが無いと誰もが知っているが、華琳はその問いを麗羽に投げる。
嘗て、悪龍と語り合ったあの昼下がりであった問答を、今ここに。
裏を返せば、華琳は麗羽のことを王として認めているとも言える。
しばしの沈黙の後に、たった一人残された袁家の王は、苦く唇を噛みしめて……緩く笑った。
「そうですわね……“例えば”、夕さんが私の王佐として暮らせるように、本物の袁家の王として振る舞える時期に戻れるのなら、今のわたくしでしたら上手く回せるかもしれませんわ」
優雅に紅茶を一口。かちゃり、と陶器の音が優しく鳴り響く。
「袁家の文官の二分化、紅揚羽の早期救済、袁家二枚看板の明確な確立、そして且授さんと夕さんをしがらみから解き放ち、さらには桂花さんだってお友達になってくださる
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