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乱世の確率事象改変
優艶なる王達の茶会にて
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なた、随分と柔らかくなりましたわね?」
「……そうかしら?」

 僅かに肩を竦めた華琳から、背中越しに疑問が返される。
 麗羽は、自覚なしか、と心の中でごちた。

「ええ、昔の華琳さんは……何処か気を張ってばかりでしたわ。私塾でも、都でも、余裕は確かに持っていたのでしょうけれども、今ほどではなかったと思いまして」
「……そう」
「先程のお話もですわ。貴女が饒舌に、それも恋する乙女のように語るなんて有り得なかったのではなくて?」

 ぴくり、と華琳の身体が跳ねた。

「恋する乙女、ね。店長もそう思う?」
「……私にとっては些か難しい質問ですね」
「感じたままを答えてくれたらいのよ」
「では……言い得て妙かと。袁麗羽様のご意見も尤も。しかし私としては、やはり貴女があの方の作り上げたモノに向ける感情は、恋とは少し違う気がしますね」
「正解……アレらのような大バカ者に向けるのは、恋心と言うには余りに種類が足りない」

 振り向くことなく語る。けれども空を見上げた華琳は、小さなため息を吐き出した。
 対して麗羽は思考に潜る。

――ほら、そんな所も。昔なら聞き返して質問の意図から何から納得しようとしたはずですもの。自身で何か思う所があるからこそ、聞き返すことをしないのでしょう?

 こんな穏やかに会話が出来ることは無かった。自分も仮面を被ってはいたが、華琳は昔から自分をそのまま出していた筈なのだ。
 だというのに、僅かばかり引っ掛かるような言葉を投げても、今の彼女は動じずに、過去をしっている麗羽からすれば不気味な程に落ち着いていた。

 自分も変わったように、きっと華琳もこの乱世で変わったのだと麗羽は思う。
 胸の内に持つ望みや願いは変わらずとも、華琳自身も成長したのだろう、と。
 それがいい事なのか悪い事なのかは麗羽には分からない。けれども……今の彼女とのこういった時間は、ずっと続けて行きたいと、そう思える。

「まあ、覇王様は乱世に恋をしておいでですからね。徐晃隊のような者達に向けるモノは恋心とは違いますか」

 クスリと小さな笑いを漏らした店長は、唐突に言葉を投げやった。
 やっと振り返った華琳は、楽しそうに店長の瞳を覗きこむ。

「あら、中々に面白い表現じゃない」
「乱世に恋……わけがわかりませんわ」
「……誰もが夢を携え、誰もが夢を語り、誰もが夢を叶えようと切磋琢磨するこの時代。名も語られない小さな星々の輝きと、自らと共に輝く綺羅星達と紡ぐ一つの物語のようなこの乱世が、覇王様は愛しくて愛しくてたまらないんですよ」

 机を指でなぞり……それで?とでも問いかける挑戦的な瞳が、店長に続きを促す。

「言葉遊びに思えるかもしれませんが……私も“料理”に恋をしてしまいましたから、覇王様
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