優艶なる王達の茶会にて
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術に目を惹かれる国らしいです」
「羅馬よりも西、ですの……」
行った事もないが途方もない距離だ。麗羽は思う。
絹の道から来る珍しい品々の美しさを思えば、なるほど、そういった国があるのだろうと直ぐに予測出来た……が、さすがに遠すぎた。
それでも、と彼女の瞳に光る憧憬の輝きは、まるで恋する少女の如く。
「いつか行ってみたいですわね」
「いいわね、新しい世代が育ったなら……ふふ、行ってみたらいいじゃない」
途端、ぎょっと目を開いた麗羽は華琳を見やる。
楽しそうに笑みを深めた覇王は、ぺろりと唇を一つ舐めた。
「長くて短い人生の中で何かをしたいと望むなら、それを諦めてはダメよ。手が届くかもしれないなら掴むべきでしょう?」
「いえ……まさか貴女からそんな言葉が出るとは思いませんでしたので」
「当然、自分が決めた責務は全うしてこそよ? でもたった一度きりの人生だもの、どうしてもしたいのなら欲しがっていい。その為に努力することは悪いことじゃないわ。国にとっても、あなたにとっても、皆にとってもね」
言い切り、しゃなりと華琳が立ち上がる。
遠く南西の空を見上げたまま、唇に指を当てた。
「そう……たった一度きりだからこそ、人の命とは大切にするべき宝物。それでもあの大バカは小さな戦場であっても命を賭ける。付き従う大切な兵士達も同じように。ほんと……呆れるくらい……」
――愛おしい。
心の中での呟きは誰にも聞こえない。
その在り方が、その生き様が、その意地が……一瞬の煌きだけを残して消えてしまうモノだと分かっているからこそ、美しいと華琳は思う。
短い間だけで散ってしまう華のように美しい、儚く尊いその想い。
誰に理解して欲しいとも思わない。ただ真っ直ぐに、自分の思ったまま行動し命を賭ける彼らに、華琳は魅せられてしまった一人なのだ。
だから欲した。黒麒麟を、黒麒麟が作る全てを。
黒麒麟に毒されたモノは、彼女が語る“誇り”を体現していると言えよう。
決して折れない想いを胸に抱いて突き進む、理不尽だろうと無茶だろうと抗い踏み倒す、それでいい……それでこそ、彼女が求めた黒麒麟そのモノ。
きっと益州でも何かしらしている事は分かっていた。
黒き大徳が、あの道化師が、ただ言われただけの任務で満足するはずが無いのだから。
一つ二つと何が出来るか考えてみれば予測が立つ。戻った時に強い身体で居てくれればいいが、やはりその数は減るはずだ……と。
遠くを見つめたままそれ以上語らない華琳に、麗羽は小さく息を吐く。
覇王が何を思っているのか、どんな表情をしているのかは覗いてはいけない気がした。
せめて、と。麗羽は疑問に思っていることを唇から流した。
「華琳さん? あ
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