優艶なる王達の茶会にて
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ませんわ」
「ふふ、麗羽。そういうときはこう言ってあげるのよ。店長……“すごくおいしい”わ」
暖かい微笑みを向けた華琳。
にっこりと笑みを返す店長は腕を曲げ、彼に習った一礼の仕方でお辞儀を一つ。
「……感謝の極み」
華琳のお礼と、店長の返しはここ最近ではこのように行われている。娘娘の中であれば、そしてそこに通っている者達からすれば見慣れた光景。
しかし完成された芸術品のような空間は、麗羽の胸にときめきを齎す。自身の知らない世界を覗いたような、お伽噺に出てくる物語に自分も迷い込んだような、そんな感覚が彼女を歓喜に震えさせた。
「て、店長、さん? その……とても、おいしかったですわ」
「恐悦至極にございます、“まどもあぜる”」
不思議な響きの呼び方が店長から零れた。
甘くて暖かく感じるその響きに、麗羽の心もまた一寸跳ねる。
華琳は初めて聞いたその言葉の意味が分からず、僅かに眉を寄せた。
「“まどもあぜる”?」
「未婚の女性に対する敬称、とのこと。余り詳しくは知らないと“あの方”も言ってましたが、響きがいいので偶に使ってます。特に袁麗羽様にお似合いかと思いまして」
「まぁ……わたくしの為に呼んで下さったんですの?」
「雰囲気というか纏う空気と言いますか……覇王様の品位も確かなのですけども、呼びたいなと思わせる気品を貴女に感じまして」
「……ふぅん、そう……麗羽には似合う、ね」
ジトリ、と店長を見据える華琳の瞳が冷たく輝く。麗羽だけというのが気に喰わないと、誰が見ても明らかだった。
「おや? ご機嫌が悪いようで。せっかく“らすく”に乗せて楽しむ果物漬けも持ってきたのですが……出せませんね」
「……私を相手に脅しなんて……あなたといい“あの男”といい、本当にやりにくい」
「脅しとは恐れ多い。まあ、私の科白でもあるのですよ。私も“あの方”も、あなたを相手取るのは必死ですから」
「……だからこそ面白いのだけれど」
これ以上は無駄だと、ため息を一つ。覇王曹孟徳相手に此処までふてぶてしく接するのは店長の他にはもう一人しかいない。
どちらも男。華琳や麗羽としては取るに足らない存在と思っていた存在である。
上から目線なわけではない。あくまで二人の男は彼女達と同じ土俵に立って話を持ちかけてくるのだ。
店長は料理人としての好敵手。そして覇王と共に利を追及せんとする商売人。
では秋斗は……と考える前に、華琳の話を全く気にせず、麗羽が不思議そうに口を開く。
「まどもあぜる、というのは秋斗さんが御教えになられたのですわよね?」
「はい」
「何処の言葉なのか知りたいですわ」
「大陸の外、とあの方は言っておりましたよ。絹の道を遥か西、羅馬よりも少し先、葡萄のお酒と芸
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