第二十三話
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「・・・・・・なんだい、アレは・・・?」
アルフが呟く。しかし、その呟きは、彼女に抱きついて震えているフェイトにさえ届かない。爆発音などが大きすぎて、呟いた程度の音など聞こえないのである。
ゴッ・・・!!!ガラガラガラ・・・!!
また、ビルがひとつ崩壊して崩れ去った。それは、数百メートルもの巨体を持つ暴走体が、吹き飛ばされて衝突したからである。
『■■■■―――!!』
暴走体に、既に戦意などなかった。悲痛な叫びと共に、悪魔から逃げ出そうとボロボロの体を引きずって海へと急ぐ。方向転換などしている余裕もなく、その傷ついた体でビルの残骸などを引き潰して進むため、ちぎれた肉片などが散乱しているが、それすら意に返さない。その逃げっぷりはいっそ哀れなほど。追い詰められた小動物を思わす動きであった。
(だけど、この程度で悪魔が見逃すはずがない)
アルフがそう確信したのとほぼ同時。暴走体は、複数の杭に穿たれた。体の太さだけでも数十メートルはある暴走体を貫いて、地面に縫いとめるその金属製の杭は、最初に体の中心部分を、まるで隕石でも落下したかのような物凄い轟音と共に貫いたかと思うと、次々と飛来し、あたかも昆虫標本のように大地へと縫いとめた。
『■・・・■■■■・・・!』
(泣いてる・・・)
言葉が分からなくても、暴走体の気持ちが分かる。というよりも、あれを見てそれが分からない者は感性がどうかしている、とさえアルフは思った。それほどに悲壮感に溢れている姿なのだ。
『■■■・・・!!!』
ブチブチと体が引き千切れるのも構わずに、暴走体は懸命に前に進もうとした。戦おう、など、今の暴走体は微塵も思っていない。強い、強い恐怖を感じ、ただ悪魔から逃げ出そうとしているだけなのだ。
・・・だが、そんな暴走体に無慈悲に声がかけられた。
「どこに行こうというのだね?」
爆発音は収まっていたが、未だに嵐は続いている。更に、数百メートルも先で、空中で立って囁いただけの葵の言葉は、何故か全員にハッキリと聞こえた。遠すぎて豆粒のようにしか見えないというのに、葵がニヤリと笑った口元さえ、アルフには知覚出来た。
「ひっ!!!」
フェイトが更にキツくアルフに抱きついた。ユーノも顔を更に蒼白にして震えている。アルフでさえ、フェイトがいなければ恥も外見もかなぐり捨てて泣き出していただろう。フェイトを守らなければという強い意思で泣きたい衝動を押さえつけているだけに過ぎない。
それほどの恐怖。生物として、絶対に敵わない圧倒的強者を前にしたかのような、本能的な恐怖を感じているのである。
「なんだい・・・なんだいアレは・・・。あんな化物、何でこんな惑星にいる
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