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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 4
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罪悪と真っ向から対峙しなきゃいけない。
 コイツが本当に苦しむのは多分、その先だ。

「さて、と」

 右手で頭をがしがしと掻き。
 どんだけ熱中すればここまで(むし)れるんだ? と。
 感心せずにはいられないほど濫立してる草塚の森を見上げた。

「この辺でいいか」

 手近にある塚を一つ適当に選んで、おりゃーっ! と蹴り飛ばす。
 千切れた葉っぱが風に乗ってぶわっと舞い散り。
 土に触れた端から、元通りの生きた姿を取り戻していく。
 厳密に言うと、この草はよく出来た作り物で、生物とは違うんだけどね。

 他の塚も次々と勝手に倒れ、草原は見事復活を遂げた。

「世界の全部をこんな風に簡単に直せるなら、誰も苦しまないんだろうな」

 現実では、何も直せない。
 目に見えて触れるものも、目に見えなくて触れないものも。
 壊れたら、失ったら、消えたら、二度と元通りには戻せない。
 だからこそ失くせば悲しいし、一つ一つを大切に守りたいと思うんだ。
 私も…………

「……って、いかん。クロスツェルを置き去りにしたままだった。そろそろ拾ってやらないと」

 蒼の女神達も移動したみたいだし、今は廃墟で一人ぼっちだよな。
 寂しさのあまり、いじけてたりしないか?
 なんて冗談を考えつつ『遠見』を使って。

「…………────!?」

 見えた光景に、心臓がピキッと音を立てて凍り付いた。

 少しずつ、落ち着いた色調へと変化し始めてる空。
 東に向かって薄く伸びながら黒く染まりだした木々の影。
 石床の上に仰向けで倒れてる、両目を閉じたクロスツェル。
 その顔色は、生物とは思えないほど、白い。

 ……嘘……だろ?
 まさか、そんな筈……。
 だって、まだ、ちゃんと……
 今のお前とは、ちゃんと話してな………っ

「…………クロスツェル────っ!!」



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