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SAO−銀ノ月−
第九十三話
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、その子を離しなさ……い……?」

 エメリを後衛であるシウネーに任せながら、リズたちは各々を鼓舞させながら曲がり角を曲がる。強靭な触手にうねる粘着性を持った軟体性の肉体、ある意味幻想的な雰囲気さえも併せ持つ。その本体を見たパーティーは、一人残らずその足を止めた。

「何あれ」

「クラーケン……クラーゲ……《クラゲ》……?」

 ダンジョンと見えるまでに巨大化した洞穴の主――巨大な《クラゲ》。かのクラーケンとの戦いを覚悟していたメンバーは、その正真正銘のクラゲっぷりに硬直し、言い出しっぺのリーファに至ってはとても冷ややかな視線を向けていた。確かに先述した通りの特徴は一致するが、どう見ても巨大なクラゲでしかなく。

「おねぇちゃん!」

 その硬直を解いたのはエメリの叫び声。見ればクラゲの触手には、エメリの面影を残す大人のNPCが捕まっていた。このままでは、エメリの言った通りに食べられてしまう――と身構えたものの、いくら巨大化しようと、クラゲに人間を食べる口などあろうはずもなく。

「やっ、くすぐっ、ひゃっ!」

 ならば何をしていたかと問われれば、捕らえたエメリの姉を触手で思う様くすぐっていた。主に足の裏を重点的にこすられていたエメリの姉は、くすぐられすぎてグッタリしてしまい、クラゲは満足げにエメリの姉を近くの足場に下ろす。物凄く繊細な動きかつ平坦な足場に下ろしたため、そこだけを見ればとても紳士的な行動だと言えなくもない。当のクラゲは一仕事終えたような、そんな満足げな表情……表情? を浮かべており、そのまま仕事終わりの一杯に向かいそうな雰囲気でもあった。

「な、なにあのクラゲ……そんなことはともかく、エメリちゃんのお姉さんを助けるわよ!」

「は、はい!」

 呆気にとられていた自我を最初に取り戻したのはリズ。彼女の呼びかけに答えて、エメリを守るシウネー以外のメンバーが翼を展開。それぞれ散開しながら飛翔する。

 新たな獲物の接近に反応した巨大クラゲが、本来のクラゲにはないその瞳を見開くと、その大量の触手をメンバーに向かって放った。粘着性を持つとはいえ、リーファやルクスほどの腕前ならば切り裂く程が可能。それ以外のメンバーも容易く避ける――ものの、触手を切り裂くのに失敗したシリカが、その足を絡めとられてしまう。

「ひゃぁぁぁぁ!」

「シリカ!」

 そのまま洞穴の天井近くまで持っていかれると、そのまま撒き餌のように宙吊りにされてしまう。上下逆さまになりながらも、剣で自分を縛る触手を斬ろうとするものの、短剣なのが災いしてまるで届かず。ピナもその爪で以てシリカを助けようとするものの、流石に小型すぎてまるで話になっていない。

「シリカ! 伝統芸能しても見せる相手がいないわよ!」

「好
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