暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
星降る夜に、何想う
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「というわけで、お願い! インゴット取りに行くの手伝って!」
「あのな……」

 呆れて大きな溜息をこぼしたマサキの目の前で、エミが両手をパチンと鳴らしつつ頭を下げた。
 マサキの生活習慣は現実世界での仕事柄かなり不規則だ。仕事の進捗次第で徹夜もするし、かといって完全に夜型というわけでもなく、用事があれば朝早くにも起きる。SAOの住人になってからは仕事に左右されることはなくなったが、数年続いていた生活習慣を簡単に変えるのは難しく、また変える必要も特に感じなかったため、マサキの生活は今もあまり規則正しいとは言えない。もっとも、トウマと行動を共にしていたこともあり、大体朝には起きて夜には寝る、という程度にはマシになったが。
 そんなマサキだが、昨日はいつもより遅くまでフィールドに出ていたため、朝目が覚めたのも遅めの時間帯となり――マサキは現在、このことを心から後悔している――。今日は特に用事もなかったためにゆっくりと朝食か昼食か微妙な食事を摂った後、コーヒーを飲みつつ頭を覚ましていたところにエミがやってきてしまった。後は、冒頭の通りである。

「……何で俺なんだ」
「わたしが知ってる中で一番強い人だもん。それに、ギルドにも入ってないから融通きくかなって」

 テーブルに頬杖をつき、不機嫌そうな視線で威嚇しつつ尋ねるが、エミはけろりとした顔で言い放つ。

「キリトとアスナは」
「二人とも今日は用事だって」
「そもそも、手伝ったところで俺に何のメリットがある?」
「これから一週間、マサキ君のお昼御飯がエミさん特製弁当にグレードアップ!」
「勘弁してくれ……」

 朗らかに告げられた罰ゲーム以外の何物でもない予告に、マサキは嘆きながら椅子の背もたれに倒れこんだ。前髪をかき上げると同時にわしゃわしゃとかきむしりつつ、目線だけをエミに投げる。相も変わらぬ人懐こい笑顔の下に、噛み付く力は一トン以上と言われるワニですらパニックを起こして逃げ惑うレベルの獰猛な牙を隠しているのだから、人間の女というのは実に恐ろしい生物である。
 マサキは椅子に深く腰掛けなおし、頬杖をついていた右手で今度は額を覆うように支えた。「昼食が」などとうそぶいてはいるが、この女がそれだけで身を引くものか。それをきっかけにその後の攻略や、晩飯にもちょっかいを出してくるに違いない。……端から見たら、アインクラッドでは珍しい美味い飯が美少女のオマケ付き――逆だろうか――でやってくるのだから、むしろ一石二鳥と思われるだろう。ちなみに、面と向かってそう言ってくる奴を見かけた暁には、マサキは喜んでその二つを譲ってやるつもりでいる。浮かれて手を出したが最後、腕までガブリと食いつかれること請け合いだが。
 というか、そもそも何故マサキなのだ。彼女なら、もっと見た目も中身もいい男を幾
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ