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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
星降る夜に、何想う
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らでも漁れるだろうに……。

「……弁当はいらん。それと、一々押しかけてくるのは止めろ。どうしても用事があるのなら、アルゴを通じてメッセージを送れ」
「それじゃあ、付き合ってくれる?」
「……それが守れるなら、な」
「やたっ! じゃあ、夜の九時に迎えに来るね!」

 マサキが渋々頷くと、エミは顔をぱぁっと綻ばせてバネのように勢いよく立ち上がり、タタタッと軽い足音をたてて走り去った。と思ったら、閉める寸前だったリビングの扉から彼女の頭部だけがにょきっと生える。

「あ、そうそう、今ならサービスで今日の晩御飯が――」
「帰れ」
「ちぇ、せっかく新しいメニューを覚えたのに。……じゃ、お邪魔しましたー!」

 エミの頭がリビングから消え、直後に玄関のドアがバタンと閉まる。ようやく出て行ったか……と、マサキは溜息を一つ。
 しかし、まだ安堵はできない。彼女が今後アルゴを通じてアポを取るようになったとして、今日のような奇襲は避けられるようになるかも知れないが、その代わりタチの悪い鼠に恰好のゴシップを流してしまうことになるのだから。
 マサキは頬の三本線を意地悪く波打たせたアルゴの顔を思い浮かべてげんなりしながら、テーブル上のポットから二杯目のコーヒーをカップに注いだ。気が乗らない脳みそをブラックの苦味で強引に回転させ、エミをより遠ざけるための次なる一手を考える。
 カップの中身を半分ほど飲んだところで、ふと部屋の隅に設置された扉つきの棚に目をやった。アイテム類を保管できるインテリアだが、装備をもうずっと更新していないマサキにとってはあまり使う機会がなく、予備の回復アイテムや転移結晶を入れてあるだけのもの。それでもフロアボス攻略戦に赴く前と後に回復アイテムを補充するため、一週間に一度ほどは触っているのだが、棚の上に伏せられている一枚の写真立てとその周辺だけは、もう四ヶ月近くも触っていない。
 ……いや、まだ四ヶ月、か。
 マサキは遠くを見るようにその写真立てを眺めながら、口づけたままのカップを再び傾けた。――こうやって、誰かの無茶ぶりに付き合わされるのも悪くない……そう思えていた時期が、自分にもあったな、などと考えつつ。



 第四十八層は、層の殆どが一つの巨大なクレーターにすっぽり覆われている階層だ。その深さおよそ数百メートル、直径に至ってはおよそ七キロ強という凄まじい大きさで、僅かに残ったマップの端は山岳地帯になっている。殆どが岩地で構成されており、主街区はクレーターの縁から漏れ出た小さな川が底で合流して作った湖の中心に存在するのだが、迷宮区がクレーターの外側にあるために攻略パーティーは漏れなく険しい山登りとクライミングを存分に堪能させられる辺り、マップをデザインした人物の性根の悪さが滲み出ている。
 閑話休題。クレータ
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