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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第210話 救えた命
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の事を信じているのだ。
 あの時、襲われたと言うのに、憎みきれなかった。あの時の恭二は別人であり、彼の頭の中に入り込んだ何者かの仕業なのだ――と信じたい自分がいる。学校で、この街で唯一信じられた男性だった、と言う理由だってあるのだ。

 あの日、新川兄弟も勿論 その場で逮捕された。

 病院で一通りの検査を受けたのは 隼人だけじゃなく、詩乃や和人もそうだった。詩乃に関しては、精神が不安定だった事もあって、渚や綺堂のケアもしつつ行っていた。和人は、先制攻撃をして それで終わったから、特にこれといって問題は無かった。詩乃は身を守る為に、色々としていた事もあって 手に擦り傷等があるだけだった。その後に事情聴取。
 何とか心落ち着かせる事が出来た詩乃だったが、一先ず午前2時には終了した。

 その夜は、絶対に帰らない事を伝え、隼人と同じ病室で一夜を過ごした。そもそも、《警備上の理由》によって 病院で過ごす事に不都合は無かった。因みに その時も彼女(・・)と、少なからず色々あったのは、また別の話だ。


 そして、詩乃は当時の夜の事を思い出しつつ、菊岡の言葉を待っていた。

「総合病院のオーナー院長の長男である新川昌一は、幼い頃から病気がちで、中学校を卒業する頃まで、入退院を繰り返していたらしい。高校入学も一年遅れて……、そのせいで父親は早々に昌一を自分の後継とすることを諦めて、3つ年下の弟の恭二にその役目を与えたようだ。恭二には小学校の頃から、家庭教師を付け また自ら勉強を教えたりする一方で、昌一の事はほとんど顧みなかった。……兄は期待されないことで追い詰められ、弟は期待されることでまた追い詰められたのかもしれない。……とは、聴取における父親本人の弁だが」

 そこで一度言葉を切って、菊岡は珈琲で唇を湿らせた。

 詩乃も、視線をテーブルに落として、《親の期待》と言うものを想像しようとしてみた。しかし、実感することはできそうになかった。あれほど近くにいながら、恭二がそのようなプレッシャーに晒されていたことにまるで気付かなかった。……自らのことばかりに一生懸命で、人を本当に見ようとしていなかった――と、またしても意識させられ、詩乃は胸に苦い痛みを感じてしまった。


――環境が人を育て、変える。


 それは、隼人もよく判っていた。……自分の経験や環境を思い返していた。
 何不自由ないと思っていた場所で 裏切りがあり 失ってしまい。そして――他人を、拒絶する様になってしまった。それでも、隼人には《親》がいてくれて、支えてくれたおかげで今まで生きてこれた。《親の期待》を自覚した事は無かったけれど それでも 親から追い詰められる事をした覚えはまるで無かったから、本当の意味では 理解をする事が出来なかったのだ。

 そし
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